アブストラクト(30巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環下開心術症例における血清酵素の変動に関する研究-体外循環下非開心術症例との比較において-
Subtitle : 原著
Authors : 小林裕夫, 奥井勝二
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 9
Page : 1572-1583
Year/Month : 1982 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環下開心術症例〔I群〕における血清酵素変動を, 部分体外循環下非開心術症例〔II群〕のそれと比較し, 変動の本態を追求するとともに, 冠静脈洞にカテーテルを留置し得た症例〔III群〕においては, 心筋保護法の効果を判定することを目的として, 冠動静脈血間較差を検討した. 対象とした酵素は, 血清中のGOT, GPT, CPK, LDH, アミラーゼ, アルカリホスファターゼと後4者においてはそのアイソザイムであり, 更に乳酸, ピルビン酸も経時的に測定した. SGOTは術後I群, II群ともに増加するが, 前者は術後24時間以内により大きく変動する. GPTには大きな変動はみられない. total CPKは, I群で開胸群が胸骨正中切開群より高値を示し, II群とほぼ同様な経過をとった. つまりtotal CPKのみでは手術術式による変動が大きく, 心筋障害の良い指標とはならない. CPK-MBは, I群で体外循環後ほぼ3時間目にピークを示したが, それ以降に上昇を示した場合高度の心筋障害が疑われる. II群の変動はほとんどない. 大動脈遮断時間とピークSGOT, CPK-MBの間に相関がみられた(P<0.05). LDHも術後上昇するが, LDH1+LDH2比率はI群で体外循環後より上昇するのに対し, II群では9時間目までは減少傾向を示した. この比率の80%以上の上昇は心筋障害を示唆する. 術後高アミラーゼ血症がI群で半数以上にみられたが, 大きな変動はsalivary typeの増加であった. アルカリホスファターゼの変動は小さい. III群において, 体外循環後早期には冠静脈血でSGOT, CPK-MB, LDH1+LDH2比率などが高値を示したが, 動脈血との間に統計学的有意差は認められなかった. 乳酸値は術直後よりほぼ好気性代謝を示した. 術後早期に, 心電図等で心筋の損傷を診断することは必ずしも容易でない. 一方, 酵素学的検討は敏感に, 量的に反映し, 術中の心筋保護効果判定にも有意義であると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 体外循環, 心筋保護, SGOT, CPK-MB, LDH1+LDH2
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