Abstract : |
腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全症(MR)の報告は, 本邦においては数少ないが, 最近その診断と治療法について関心が高まっている. 本症に対する外科治療に当たり, 腱索断裂の誘因, その部位と範囲, 弁尖及び弁輸の病変などにより種々の術式が考えられる. 我々は腱索断裂によるMRの10例を経験し, うち9例に手術を施行した. 病因別にみると, 特発性と思われるもの5例, 細菌性心内膜炎2例, Marfan症候群, 修正大血管転位症, リューマチ性が各1例であった. 臨床経過をみると, 腱索断裂に特有な急性症状を呈したのは3例のみで, また1例は細菌性心内膜炎治療中に突然心雑音が出現して診断し得たが, 他の症例にあっては腱索断裂の発現時期を判定することはできなかった. 8例に入工弁置換手術, 1例に弁尖縫縮・弁輪縫縮術を行った. 人工弁置換の3例には, St. Jude Medical弁を使用し, 弁及び弁下組織を切除しないで人工弁移植を行い, 良好な結果を得た. 特発性腱索断裂例でも, 弁組織, 弁下組織が極めて脆弱で弁形成術が困難な症例のあることに注意しなければならない. |