Abstract : |
動脈硬化に起因する虚血性心疾患に対して純粋にA-C Bypass術のみを施行した263例を対象として患者の年齢と手術成績との関係を検討した. 全体の手術成績は手術死3%, 病院死0.8%, 遠隔死0.8%であったが, 手術死亡率を年齢別にみると40歳以下15例中0 (0%), 40~49歳81例中2 (2.5%), 50~59歳119例中4 (3.4%), 60~70歳48例中2 (4.2%)となる. 冠状動脈病変の拡がりを各年齢別に検討すると左冠状動脈主幹部(LMT)病変プラス3枝病変の頻度が高齢者群に多く認められた. 各年齢群におけるLMT病変の頻度は40~49歳11%, 50~59歳19%, 60~70歳25%であり加齢とともに増加傾向を示す. 駆出率0.3以下の左室機能低下例は高齢者群に多くみられ, これは冠状動脈病変の重症化に伴うものと考えられた. 加齢と術中心筋梗塞, 術前の心筋梗塞の既往, 不安定狭心症の頻度などとの間には相関は認められなかった. 60歳以上の症例48例において手術死2例, 病院死2例, 遠隔死1例の計5例のうち4例がLMT病変を有し, しかもこのうち3例がLMTプラス3枝病変の最重症冠状動脈病変群に属するものであった. すなわち60歳以上であっても1枝, 2枝, 3枝病変群においては手術死亡0で手術を行うことが現時点で可能であり, 単に高齢なるが故の死亡率の増加は認められない. 以上のことから加齢に伴う手術死亡率の増加は認められるものの, これはあくまでも冠状動脈病変の重症化, 特にLMT病変の増加に基づくものであり, 高齢ということのみで手術適応が制約されることはないと考えられる. |