アブストラクト(30巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環中の血小板に対するProstaglandin E1の保護効果に関する臨床的並びに実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 長田博昭, 川田忠典, 保尊正幸, 舟木成樹, 荒瀬一巳, 稗方富蔵, 野口輝彦
Authors(kana) :
Organization : 聖マリアンナ医科大学第3外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 10
Page : 1656-1663
Year/Month : 1982 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環中の血小板に対し, Prostaglandin E1(PGE1)が保護的に作用するか否かを臨床例と動物実験とで検討した. 臨床例ではKolobow膜型肺を含む体外循環系を膜肺のCO2-flush後に無血充填し, 21成人開心術例の内14例を実験群として体外循環前にPGE1 4mcg/kg宛静注, 一方充填液にもPGE1 100mcg/Lを混入した. 動物実験では犬でシート式気泡型肺を用い2時間の体外循環を施行, 実験群にはPGE1を同様に投与した. 血小板数・凝集能・粘着能を測定, 臨床例では術後出血量を検討した. 血小板数は臨床例のPGE1群で循環120分まで対循環前値比100%以上を維持したに対し, 対照群は30分まで同様の高値を示しながら, 60分90分にて低下を見たが有意差はなかった. しかし膜肺のCO2-flushもせずPGE1も使用しなかった無処置参考群と比べると循環60分でPGE1群のみ有意に高値であった. 動物実験では循環10分30分にてPGE1群が高値を示したが, 有意ではなかった. 凝集能を見ると臨床例では両群とも循環中は対循環前値比50~118%で, 循環終了直後は対照群が26%に低下したに対しPGE1群は50%前後にとどまった. 動物実験では両群間に差はなかった. 術後出血量はPGE1群では13.1ml/kgと, 対照群の22.4より有意に少なかった. 以上, 臨床例では対照群にも共通して施したCO2-flushが循環初期の血小板数低下抑止に大きく寄与し, PGE1の効果を遮蔽したようではあるが, 間接的ながら循環60~90分前ではPGE1の効果が伺われ, 術後出血量の減少等, 有利な結果をもたらしたように思われた. PGE1の効果のみを抽出検定しようとした動物実験では予期したような結果を得なかったが, 臨床例での印象を検証するには膜型肺を用いた動物実験が必要であると考えている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Prostaglandin E1, Platelet preservation, Extracorporeal circulation.
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