アブストラクト(30巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心房, 心室錯位を伴う先天性心疾患の外科治療成績と問題点
Subtitle : 原著
Authors : 北村惣一郎, 広瀬一, 松田暉, 島崎靖久, 奥田彰洋, 八木原俊克, 康重雄, 小川実, 宮本勝彦, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 10
Page : 1684-1694
Year/Month : 1982 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心房心室錯位を伴う心奇型25例の手術例中根治手術を施行した22例についてその手術成績, 遠隔成績を報告しmorbidity, mortalityに及ぼす危険因子を検討した. 危険因子としては完全房室ブロック (CHB), 解剖学的三尖弁逆流(TR), 心筋不全, 術後大動脈弁閉鎖不全(AR), 不整脈, 残存肺動脈狭窄(PS)などが認められた. CHBは手術死亡例に多く解剖学的左室切開(LVT)により心室中隔欠損(VSD)を閉鎖した例に多発した. TRには幼児期より高度の逆流を示す三尖弁奇型(エプスタイン様奇型)と経年的あるいは術後悪化傾向を示すものの2種があった. 術後悪化例では解剖学的右室切開(RVT)よりVSDを閉鎖した例に多く, 手術操作に伴う三尖弁の変形が関与していると考えられるが, 肺高血圧を生じて遠隔期死亡や生存例者でのmorbidityに大きく関与していた. 心筋不全はRVT例に見られ遠隔期死亡の重要な原因となった. この右室機能不全もTRを悪化させる一原因と考えられた. ARは大動脈切開(AOT)でVSDを閉鎖した例に見られたが予防し得ると考えられた. 現生存者の2例に心房性不整脈, 頻脈が生じ愁訴の原因となっている. 最近の手術成績の向上(手術死亡率昭和52年以後12.5%, 以前50%, p<0.075)には心筋保護法, CHBの回避, 至適サイズのextracardiac conduitの使用, 経験の蓄積によるCHBの回避などが挙げられるが今後の方針としてVSDは右房切開(RAT)で又はLVTで縫合糸をRV側にかける術式, 大動脈の十分太いものではAOTでRV側より閉鎖する術式を用いたい. RVTはCHBの回避には良好であったが術後遠隔期に心不全, TRの悪化を来しやすい. PS例では弁切開のみで行えるもの以外は姑息手術(シャント手術)で幼児期を乗り切り待機させ, LV-PA conduitを用いる方法を基準としたい. 肺動脈弁下切開, 弁輪拡大は行わない. TRに関しては例数は少ないが弁置換術が完全で形成術は難しい例が少なくないと思われる. 本症の遠隔死亡率は23%と先天性心疾患としては異常に高値を示し, また生存者でもNYHA 2度以下が44%を占め術後問題の多い疾患群であった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心房心室錯位, 完全房室ブロック, 三尖弁逆流, 経大動脈心室中隔欠損閉鎖法 extracardiac conduit
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