アブストラクト(30巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高度の弁下病変を呈する僧帽弁狭窄症の直視下交連切開術 -術後遠隔成績よりみたその評価-
Subtitle : 原著
Authors : 中埜粛, 広瀬一, 松田暉, 白倉良太, 賀来克彦, 島崎靖久, 佐藤重夫, 榊原哲夫, 酒井敬, 平中俊行, 大竹重彰, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 11
Page : 1803-1808
Year/Month : 1982 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 僧帽弁狭窄症(MS)の中でも特に高度の弁下病変を呈するものに対しては保存的手術か, 弁置換術かの術式選択に関し議論は多い. 教室では積極的に弁を温存再建する手術方針をとってきたが, 今回かかる症例に対する直視下交連切開術(OMC)の術後遠隔成績を検討しその評価を行った. 1. 対象は1972年1月より最近10年間のOMC施行症例212例のうち, 高度の弁下病変(Sellors分類 III型)を呈した53例である. うち20例には弁尖石灰化を認めた. なお, この間における弁置換術症例は16例-cuspal type MS 7例, 弁論組織にも及ぶ石灰化弁6例, 及び手術時の逆流発生例の3例-で, 弁置換率は7%であった. 2. 手術死亡2例(3.8%), 遠隔死亡1例(1.9%)で, 再手術例は3例(5.7%)であり, これらのpercent free rateは78.6%(術後9年)であった. 全症例212例についてのそれは79.1%(術後9年)で, ほぼ同率であった. 3. 術後臨床症状の改善は再手術例を除き全例に認め, 術後NYHA I度68%, II度32%であった. 4. UCG短軸断層法にて測定した僧帽弁弁口面積は平均2.4cm2であり, また経年的変化は認めなかった. 5. 再手術の3例は全例, 初回手術時既に閉鎖不全の合併を認めた症例であった. 6. 術後遠隔期における血行動態的検討により, 軽度の弁尖石灰化自身は術後弁機能に影響を与えないことが明らかにされた. 以上より, 高度の弁下病変を呈する僧帽弁狭窄症に対する直視下交連切開術の術後遠隔成績は, ほぼ満足し得るものと結論される. 弁の病理学的変化がたとえ高度であっても, 今後とも積極的に保存的手術方法を続けていく方針である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁狭窄症, 直視下交連切開術, 高度弁下病変
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