Abstract : |
リュウマチ性の僧帽弁閉鎖不全症兼三尖弁閉鎖不全症(MR&TR)手術症例42例の, 術前心機能と予後との関係を, 左心機能及び右心機能の両面より検討した. (1)低心拍出量症候群(LOS)による死亡例3例は心係数(CI)1.5l/min/m2未満, 右室拡張末期圧(RVEDP)10mmHg以上, 平均中間肺動脈圧(PAm)35mmHg未満, 左室拡張末期圧(LVEDP)14mmHg以上の4条件をそろえていた. (2)術前検査値において, ICU滞在日数を延長させる危険因子として認められたものはRVEDPだけであり, RVEDP 10mmHg未満の群が2.7±1.2日であるのに対し, 10mmHg以上の群では5.3±3.0日と有意差を認めた(p<0.0025). (3)RVEDPに影響を与える因子として, PAm, LVEDP, TRの程度との関係を検討した. (1)PAmとはr=0.56, LVEDPとはr=0.72の正の相関が認められた. (2)RVEDPとPAmとの関係は予後を最も良く反映し, RVEDP10mmHg以上でPAm35mmHg未満の群は死亡例3例を含め, 残りの4例も全例ICU一週間以上の長期滞在例であるのに対し, RVEDP10mmHg未満でPAm35mmHg以上の症例は全例予後良好であった. (4)LVEDPと左室駆出率(LVEF)の関係において, LVEDP14mmHg以上でLVEF50%未満の症例は予後不良であった. しかしLVEDP14mmHg未満でLVEF50%以上の左心機能良好群においてもICU長期滞在例が認められた. 以上よりMR&TRの術後経過には, 術前左心機能だけでなく, 右心機能が大きく関与しているとの知見を得た. |