Authors : |
安井久喬, 古森正隆*, 瀬々顕, 角秀秋, 田中二郎*, 松井完治*, 富永隆治*, 吉利用和*, 徳永皓一* |
Abstract : |
乳児人工心肺におけるpulsatile bypass pump(PBP)の使用条件を動物実験に基づき設定した. 更に同条件によるPBP拍動流の有効性を乳児の表面冷却, 中心冷却併用超低体温下循環停止法症例(無拍動流群10例, 拍動流群10例の比較)により検討した. 1. PBP使用条件と橈骨動脈圧波形:送血カニューレサイズは体重3kg未満でBardic#10, 3~6kgで#12, 6~9kgで#14, 9~10kgで#16を使用した. PBP駆動圧は350mmHg, 駆動回数は100回/分とし, 灌流量は120~140ml/kg/分, 中心静脈圧は10mmHgを保った. この条件下の橈骨動脈圧は中心冷却, 加温時ともに脈圧29±4mmHg, 900±120mmHg/secを呈し, 生理的動脈圧波形に近い圧形体を示した. 2. 中心冷却, 加温時の食道─直腸, 食道─皮膚の温度較差は拍動流群が著明に少なかった. 人工心肺終了時のpHとBEは拍動流群が良好な値をとったが, 有意差は見られなかった. 3. 術中並びに人工心肺中尿量は拍動流群が有意に多く(p<0.05, p<0.001), 拍動流の腎機能に対する好影響を示唆した. 4. 術中並びに人工心肺中の水分出納は拍動流群, 無拍動流群ともに患者plusであるが, その量は拍動流群が有意に少なかった(各々p<0.001, p<0.01). 術後の体重増加量も拍動流群が有意に少なく(p<0.001), 拍動流群の浮腫発生の少なさを示した. 5. 術後覚醒時間と気管内チューブ抜去時間は拍動流群が有意に短く(各々p<0.001, p<0.005), 拍動流群の脳の回復及び麻酔薬排泄の速さ, ひいては臓器機能の良好性を示唆した. 6. 人工心肺終了時の拍動流群の血清遊離ヘモグロビン値は平均55mg/dlであり, PBPに起因する過度の溶血を認めなかった. 以上PBP拍動流の臨床的有効性を示す所見より, PBP拍動流が乳児人工心肺安全性向上のための有用な手段になり得ると考える. |