Abstract : |
WPW症候群における複数副伝導路症例などの外科的治療の成績向上の資とするため, 心房マッピングを参考に心室刺激時間を設定する新しい融合波作成方法によりWPW症候群の実験モデルを作成し, 心電図所見と心室興奮伝播図所見を検討した. 教室で開発した心室興奮伝播図の自動表示装置で心室マッピングを行う場合は, 心房電位が時間基準点として適当であり, 本実験モデルでは, 心室刺激時間を適正に設定できるため, 臨床例と基本的に同じ心電図所見と心室興奮伝播様式を作成できた. 右室左室の1ヵ所ずつを刺激して融合波を作成した複数副伝導路モデルでは, 心電図上は早く刺激された心室側のデルタ波が優勢だが, 四肢誘導の初期成分と胸部誘導の波形の検討により単数副伝導路モデルとの鑑別が可能と思われる例も存在した. 心室興奮伝播図では, 全例で最早期興奮部位を2ヵ所描出でき, 単数副伝導路モデルとは異なった興奮伝播様式を示した. 左右の後中隔付近を刺激した複数副伝導路モデルと, 同部を刺激した単数副伝導路モデルとは, 後中隔での興奮の遅れと早期興奮領域の面積が鑑別の要点となった. 多くの複数副伝導路モデルでは, 右室自由壁の興奮伝播様式は右室刺激のみの実験モデルと異なった様式を示し, 右室自由壁の興奮伝播様式の詳細な検討による左心側の他の副伝導路診断の可能性が示唆された. 同側の心室の2ヵ所を刺激して融合波を作成した複数副伝導路モデルでは, 2ヵ所の中間を刺激した単数副伝導路モデルと同様の心電図所見を示した. 心室興奮伝播図では, 両刺激部位の間に一区域以上の間隔が存在した例で, 2ヵ所の最早期興奮部位が描出された. 以上の心電図所見と心室興奮伝播図所見の特徴を参考にして, 術前術中の検査を行うことにより, 複数副伝導路症例の診断能力の向上と, なお一層の副伝導路切断術の成績の向上が期待される. |