アブストラクト(30巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺動脈狭窄を伴う重症チアノーゼ性心疾患における肺内側副血行量の測定
Subtitle : 原著
Authors : 細川裕平, 中村和夫
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 12
Page : 1980-1989
Year/Month : 1982 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺動脈狭窄を伴う重症チアノーゼ性心疾患の開心根治術後に低心拍出量症候群を合併しやすいことは, よく経験される所であるが, その原因の1つに気管支動脈などによる肺内側副血行路の存在があることに着目し, 側副血行量を定量的に知り, それが術後早期にどのような臨床的意義をもつかについて検討した. 対象とした症例はコントロールとして非チアノーゼ性心疾患18例(心室中隔欠損症13例, 心房中隔欠損症5例), チアノーゼ性心疾患14例(ファロー四徴症10例, その他4例)の計32例であった. 肺内側副血行量は, 左右心拍出量の差と考えられ, 右心拍出量の測定は, 色素を右房に注入し, 肺動脈にて検出した値とし, 左心拍出量は, 左房注入, 橈骨動脈検出によって得られた値とした. 心拍出量の20分間隔を置いた測定の再現性は, 研究対象とは別の5例において検討されたが, r=0.96と良好で20分間隔を置いた連続測定で心拍出量はほぼ変化しなかった. 非チアノーゼ群では, 左右心拍出量はほぼ±10%以内に一致していた(r=0.94, n=69). 一方チアノーゼ群においては, どの測定をとっても左心拍出量の方が大きく, 左心拍出量に対する肺内側副血行量の割合すなわちシャント率は平均で30%であった. シャント率と各種血行動態の指標(右心係数, 体動脈中間圧, 肺動脈中間圧, 体血管抵抗係数, 肺血管抵抗係数)との相関をみると右心係数とr=-0.54の相関を認めた以外には統計学的に有意の相関を認めなかった. 回帰式により, 右心係数3L/min/M2時のシャント率は30%であった. 術前の心大血管造影所見上, 下行上行大動脈断面積比との間には, r=-0.74, p<0.01の相関があり回帰式よりシャント率30%時の下行上行大動脈断面積比は0.3であった. これらの所見より肺内側副血行路は開心術後早期の低心拍出量症候群の発生に大きな役割を果たしており, シャント量が大きく左心不全を伴う症例には外科的療法も必要と思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 先天性チアノーゼ性心疾患, 肺内側副血行量, 右心拍出量, 左心拍出量, 開心術後早期低心拍出量症候群
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