アブストラクト(31巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Alloxan糖尿病犬の体外循環前後の心機能と心筋代謝
Subtitle : 原著
Authors : 宇賀五郎, 寺本滋
Authors(kana) :
Organization : 岡山大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 1
Page : 1-12
Year/Month : 1983 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術患者には糖尿病を合併している患者は多く, しかもその死亡率は高いと予想される. しかしながら糖尿病を合併した開心術患者の, 術中・術後の病態生理を究明した研究はない. 本研究は, 雑種成犬にAlloxanを静注し(90mg/kg), 急性糖尿病犬を作製し, 2日後, 中等度低体温下にcardioplegiaを併用した60分間の大動脈遮断を行い, 糖尿病心の体外循環前後の心機能や心筋代謝について, 正常心のそれと比較検討したものである. 1. 血糖値は, 糖尿病心では体外循環後に依然, 高血糖ではあったが, その値は低下した. 対照群では上昇したが, 糖尿病心のそれよりは低値であった. insulin値に有意の変動はなかった. 2. 糖尿病心では体外循環前から, 心拍数の増加及び左室1回拍出係数の低下があった. 3. 糖尿病心では体外循環後に, 体血圧, 左室分時仕事係数, 左室1回仕事係数, Max(-dp/dt)が低下した. 時定数に変化はなかった. 4. 動脈冠静脈カリウムイオン濃度較差は, 体外循環後に両群とも低下したが, 糖尿病心での低下が著明であった. 5. 動脈血乳酸濃度及びピルビン酸濃度は, いずれも体外循環後に両群とも増加したが, 糖尿病心での増加が著明であった. 6. 糖尿病心の乳酸摂取率は, 体外循環前後とも低値のままであった. 以上より, 糖尿病心の機能低下は, 体外循環により顕在化し, 機能低下の主因は収縮力の低下であると結論された. 拡張期の左室complianceの低下も否定できないが, 本研究では左室容量を測定しておらず, 断定しかねた. また糖尿病心では, 嫌気性代謝の亢進がうかがわれた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 糖尿病心, Alloxan糖尿, 体外循環, 心筋保護
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