Abstract : |
肺剔除術・肺葉切除術・部分切除術又は開胸術の各10例と, 両側開胸術4例・術後肺合併症8例に対し, 術前日より第3病日までSwan-Ganz catheterを挿入し循環諸量の測定と, 術前日より第7病日までの肺内シャント率の測定を, ともに空気吸入下並びに純酸素吸入下にて施行した. 更に術側残存肺のガス交換検索の目的で, 肺葉切除12例に対し肺葉切除後術側残存肺静脈にカテーテルを挿入, 第3病日まで留置し採血, ガス分析を施行した. 一方, 術前・術後1週間目に肺血流シンチを行い, 術側と健側の肺血流分布の変動を検索した. 以上より術前・術後早期のガス交換・肺循環動態の変動を術式別に検討し以下の結論を得た. (1) 術後低酸素血症に関しては, 術側残存肺が肺内シャント発生源となる可能性があり, このため肺剔例では葉切例・開胸例と比較し, 術後PaO2は高く肺内シャント率は低い傾向にあった. しかし, 葉切例の術側残存肺ガス交換は12例中9例で障害を認めなかった. 葉切例での術側肺血流は術後1週間目で20.3±7.8%と低下しているため, 術側肺ガス交換状態の動脈血への影響は少なく, 術側肺合併症が発生してもPaO2の低下は軽度であった. (2) SvO2 60%以下を示す症例は肺剔例でC.I.3L/min/M2以下の症例に多く認められた. 葉切例・開胸例ではSaO2が90%以下に低下してもSvO2は60%以上に保たれていた. (3) 葉切例の術後術側肺血流は異常に低下しているため, 葉切例と肺剔例の術後肺血行動態は近似していた. (4) 術側残存肺には局所の肺胞気酸素分圧低下が原因と考えられる肺血管収縮による機能的肺血管床の減少を認めた. |