Authors : |
小林百合雄1), 田中一彦2), 公文啓二2), 磯部文隆2), 岸本康朗2), 康義治1), 富野哲夫1), 内藤泰顕1), 藤田毅1), 呉聡栄3), 曲直部寿夫1) |
Abstract : |
15歳末満の小児開心術症例374例において, 術後の急性腎不全(ARF)の発生率, 原因, 及びARFの治療の1つとしての腹膜灌流(PD)について検討した. 1. 6カ月未満の乳児の腎は, 組織学的にも, 機能的にも未熟であった. 従って6カ月未満の乳児開心術後のARFの定義を血清クレアチニン(Scr)値が1.5mg/dl以上とした. 6カ月以上の年長児は, 成人の場合と同様に2.0mg/dl以上とした. 2. ARFの発生率は, 6カ月未満症例30.4%, 6カ月以上症例2.1%であり, 6カ月未満症例においてARFの発生率が高率であった. 3. ARFの原因は, 6カ月未満症例では, 3時間以上の長時間体外循環と術後の低心拍出量症候群(LOS)によるもの36%, LOSによるもの36%であり, その他ショックによるものが29%を占めていた. 6カ月以上症例では, 長時間体外循環とLOSによるもの71%, LOSによるもの27%であった. 4, ARF例の死亡率は, 6カ月未満症例71%, 6カ月以上症例14%であり, 死亡原因は両型合わせてLOSが73%, 敗血症が18%を占めていた. ARF例の予後を改善するためには, LOSの改善に努めることが最も重要で, 敗血症等の合併症に対する注意も必要である. 5. ARFの治療としてはPDが有効であり, 6カ月未満症例においては, 水分バランスの管理, 高K血症, アシドーシス等のコントロールのために, より早期にPDを施行すべきである. 6カ月未満症例におけるPD開始時の平均Scr値は1.6mg/dlであった. |