Abstract : |
1979年1月から1981年10月の間に教室で行われた後天性弁膜症手術89例中, 両弁置換, 再弁置換及び冠動脈疾患を除く76例を対象として疾患, 術式別に心エコー図法により術前及び術後1~2週, 1カ月, 4~8カ月, 1年以降と経時的に心機能の推移を検索し, 更に1年以降においては臥位エルゴメーターによる動的運動負荷を行い心機能予備力を評価し以下の結論を得た. 1. 僧帽弁閉鎖不全症(MR), 大動脈弁閉鎖不全症(AR)群では術前逆流による心ポンプ機能の著明な増加を認めたが, 弁置換術後速やかに改善し正常域に復した. 2. 大動脈弁狭窄症(AS)群では術前の心機能は最もよく保たれており, 術後の心機能も術前と同じく良好であった. 3. 僧帽弁狭窄症(MS)に対する交連切開術(MS-MC)群と, 弁置換術(MS-MVR)群とを比較すると, 術前は弁置換術群の方が心機能は低下していたが, 術後安静時では両群間に有意差なく改善された. 4. 動的運動負荷による心予備能の評価では, MS-MC, AR群に比し, MS-MVR, MSR, MR群では心機能予備力の低下が明らかにされ, これらの群での術後心機能の改善度は不良であることが判明した. 5. 心ポンプ機能を表すSIの運動時における増加率%△SIを増加群(%△SI≧10%), 不変群(-10%<%△SI<10%), 減少群(%△SI≦-10%)に分け, mVcFとDdの運動時における増加率%△mVcF, %△DdをXY座標上に表すと, 増加群と不変群間はy=-5.03x+30.0, 不変群と減少群間はy=-5.67x-10.2, 増加群と減少群間はy=-4.30x+7.9で明確に区分された. 6. 動的運動負荷心エコー図法は心機能予備力の評価に有用であり, 左室のポンプ機能の予備力(△SI)と心筋収縮性の予備力(△mVCF), 前負荷の予備力(△Dd)との関係を知ることができ, 術後患者の潜在性心不全状態の検出にも有用であると考えられた. |