アブストラクト(31巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 巨大左房を伴う僧帽弁膜症 -肺・気管支圧迫による術後呼吸障害-
Subtitle : 原著
Authors : 高原善治1), 川副浩平1), 田中一彦1), 藤田毅1), 小塚隆弘2)
Authors(kana) :
Organization : 1)国立循環器病センター心臓血管外科, 2)国立循環器病センター放射線科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 2
Page : 225-231
Year/Month : 1983 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 僧帽弁膜症において巨大左房(GLA)例は, 外科治療上, 種々の問題があるとされている. その中で術後呼吸管理上の問題を検討した. 術前胸部レントゲン像にて巨大左房による圧迫にて, 左主気管支の著明な狭窄を認めた4例, 右中下葉の無気肺や著明な含気量低下を認めた2例及び両者を合併した4例, 合計10例について対照群(僧帽弁膜症で術前心胸係数CTR>65%, GLA例以外)と術前胸部レントゲン所見, 心肺機能及び術後呼吸管理について比較検討した. 術前胸部レントゲン像にて, GLA群では対照群に対して有意に気管分岐角拡大, 左主気管支径・気管径比の減少及び右側心胸係数の増大を認めた(p<0.005). 術前肺機能では肺活量がGLA群で対照群より減少(p<0.02)を認めたが, 残気率, 1秒率, 最大中間呼気流量, クロージング・ボリューム, 血液ガス所見に差はなかった. 術前の肺動脈圧, 左室駆出率, 左室拡張期終末圧及び心拍出係数にも差は認めなかった. しかし術後呼吸管理上GLA群では7日以上長期人工呼吸管理例80%, 再挿管例71%, 気管切開例60%, 死亡率50%と難渋した. 対照群は問題なかった. GLA群ではweaning開始とともに換気不全, 喀痰喀出困難, 肺炎の合併により二次的に血行動態の悪化, 腎不全, 重症感染症に陥るためであった. この呼吸不全の原因として巨大左房による肺・気管支の圧迫が考えられ, これらの症例に対して気管支ファイバースコープを行うと左気管支がほとんど閉塞している例と右中下葉の気管支に著明な狭窄がある例が認められた. 従って術前胸部レントゲン像にて巨大左房による左主気管支の圧迫や右中下葉の圧迫が認められる例に対しては, その圧迫を除く対策が必要であると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 巨大左房, 僧帽弁膜症, 肺・気管支圧迫, 術後呼吸障害, 左房縫縮術
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