Abstract : |
最近, 全身動脈硬化が著しく, 更に, 心肺機能及び腎機能の低下を伴う弓部包含下行大動脈瘤の患者に対し一時的バイパスを永久バイパスとし良好な結果を得たので報告する. 術中, 一時的バイパスを上行大動脈と下行大動脈間に作成の際, 上行大動脈壁は予想以上に脆弱で縫合糸刺入, 及び鉗子遮断部位に一致し多数の亀裂を生じたため, Teflon pledgetによる特殊補強を余儀なくされた. その結果, 長時間の大動脈遮断に基づく瘤切除兼人工血管置換は後負荷に対する影響のみならず, 全身血管の脆弱性より考え, 極めて危険であると判断し, 大動脈瘤の中枢端を三層に閉鎖を行い, 末梢のみ切離し, 大動脈瘤は空置した. 本症例では腎機能低下を伴うこと, 更に, 大動脈瘤切除のためには左総頸動脈へのバイパスも必要ではないかとの考えから一時的バイパスとして24mmの枝付きダクロングラフトを使用していたことから, 術後の血行動態は極めて良好で早期歩行が可能であった. 成因としては梅毒性中膜炎に動脈硬化が加味されたものではないかと考えられた. 今後, 高齢, poor risk症例 対しては考慮すべき手術方法と思われる. |