アブストラクト(31巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Mモード心エコー法による冠動脈手術術後長期評価
Subtitle : 原著
Authors : 尾碕俊造, 瀬在幸安
Authors(kana) :
Organization : 日本大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 3
Page : 279-290
Year/Month : 1983 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 虚血性心疾患に対する冠動脈手術症例43例の術前術後にMモード心エコー法を用いて, 左心機能の評価を行った. 術後は最長6年まで観察し, 1年ごとに区切って評価した. 測定評価した指標は, 僧帽弁前尖A/E比, 僧帽弁後退速度(E-F slope), 心室中隔の運動, 心室中隔及び左室後壁の振幅(IVSE, PWE)である. これらの指標は心カテーテル検査及び左室造影法から求めた指標と良好な相関を認めており, また各指標の推移とNYHAの機能分類とも同様の傾向を認め, 信頼性, 有用性を確認している. A/E比, 弁後退速度は術前に比べ術後早期には異常値をとるものが多いが, 年数の経過とともに徐々に改善し, 良好な値をとるものが増加している. 心室中隔の動きは, 術後早期には異常運動例と, 特に低振幅例が増加するが, 術後1年ごろより65%以上は正常運動となり, 更に経過とともに正常運動例の増加を認める. 左前下行枝病変を有する症例の心室中隔運動の検討でも, 術前異常運動例が多く, 術後正常運動例が増加する. 左前下行枝病変での中隔運動は一定ではなく, また病変局在部位で区別しても特定の傾向は認められない. また術後の改善も左前下行枝への血行再建の効果のみによる結果かどうかは不明である. 心室中隔及び左室後壁の振幅は, 術前は一方あるいは両方の指標の異常値を示す症例が多いが, 術後は正常例が多くなり, 左室壁運動の正常化, つまり左室収縮能の改善が証明される. しかし冠動脈へのグラフトの閉塞例は両指標の極端な低値を認める. 非観血的で手軽な心エコー法による左室機能の評価は, 信頼性も高く且つ有用である. また虚血性心疾患に対する冠動脈手術による心機能の向上及び安定化をあらためて確認した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Mモード心エコー図, A-Cバイパス手術, 左室機能, 心室中隔運動
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