アブストラクト(31巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 感染性心内膜炎に対する弁置換術の問題点
Subtitle : 原著
Authors : 数井暉久, 山本直樹, 仲倉裕之, 塚本勝, 田中利明, 泉山修, 原田英之, 横山秀雄, 山口保, 渡辺祝安, 星野豊, 佐々木孝, 杉木健司, 小松作蔵
Authors(kana) :
Organization : 札幌医大胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 3
Page : 297-305
Year/Month : 1983 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 感染性心内膜炎(IE)に起因する重症弁閉鎖不全46例に対し弁置換術を行ってきたが, その成績を諸因子別に検索し, 併せて本症に対する外科治療上の問題点について検討した. 対象の内訳は感染の活動期15例及び非活動期31例, 部位別では大動脈弁28例, 僧帽弁13例及び大動脈弁+僧帽弁5例, 自然弁の感染(NVE)38例及び置換弁の感染(PVE)8例であった. 手術適応は全例NYHA III度以上の心不全であり, 全身性塞栓症あるいは感染遷廷を1/3の症例に認めた. 外科治療の成績は早期死が46例中13例28%であり死因の大半は心不全であった. 感染の活動期, 術前抗生剤投与の有無及び投与期間あるいは感染部位などは早期死に直接影響を及ぼす因子ではなかった. 起炎菌別では真菌類, グラム陰性菌は高い死亡率を示し, 一方連鎖球菌は良好であった. NVE 21%及びPVE 63%の早期死であり後者の成績は不良であった(p<0.025). なおIEに対する早期診断, 早期手術の必要性が叫ばれ, また手術手技の向上, 心筋保護法の改善などに伴い1975年以降では23例中3例13%の早期死となり, 1975年以前の44%に比して手術成績の著しい向上を認めた(p<0.05). 術後2カ月より7年の遠隔追跡では生存25例, 遠隔死6例, 消息不明2例であった. 術後合併症として感染残存2例, 弁周囲逆流を6例に認めたが, 再感染例はみられなかった. 感染残存はいずれも活動期の大動脈基部膿瘍例であり非活動期例に比してその頻度は高かった(p<0.05). また弁周囲逆流はいずれも大動脈弁位であり, うち4例は大動脈基部膿瘍例であった. IEの手術適応は心不全, 全身性塞栓症, 感染遷延などであるが, 不可逆性の心筋障害に陥る以前に早期の外科治療を施行すべきである. 手術手技としては感染部廓清及び弁置換術が原則であるが, 大動脈基部膿瘍例では感染残存, 弁周囲逆流などの術後合併症が多いことからより根治的な術式の選択が望まれる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 感染性心内膜炎, 重症弁閉鎖不全症, 弁置換術
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