アブストラクト(31巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : チアノーゼ性心疾患に対する上大静脈 -肺動脈吻合術(Glenn手術)の長期遠隔成績と問題点について
Subtitle : 原著
Authors : 安倍十三夫, 橋本章, 菊地洋一, 田中明彦, 木村希望, 泉山修, 山口保, 上田睦, 浅井康文, 杉木健司, 小松作蔵
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 3
Page : 315-323
Year/Month : 1983 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : チアノーゼ性心疾患に対する上大静脈一肺動脈吻合術(以下, Glenn手術)は動脈系短絡手術の有効性が認められ, 臨床への応用は少なくなってきているが, 一部疾患に対しては, 今なお有用な術式である. 教室では, 昭和37年~昭和57年6月末日までに, Glenn手術を30例のチアノーゼ性心疾患に施行してきたので, その手術成績, 術後長期遠隔成績及び本術式の問題点について検討した. 今回の研究対象例は男性21例, 女性9例, 手術時年齢は1.2~37歳(平均14.1)で, 手術死亡は7例(23.3%)である. 生存の得られた23例は, 術後1.1~20年(平均14.7)であり, 術後10年以上の生存は19例(63.3%)であった. また, 再手術は8例(9回)に, 術後平均12年に施行し, このうち, 3例に機能的根治手術を施行し, 救命している. 疾患別ではファロー四徴症11例, 手術死亡4例, 再手術は3例に施行し, このうち, 1例は術後19年目に機能的根治手術を行い救命している. 大血管転位症では5例に施行し, 全例に生存を得, 現在, 術後10~18年を経過しているが, 右胸心, 肺動脈発育不全が著明で, 根治性に乏しい症例である. 三尖弁閉鎖症は5例に施行し, 手術死亡もなく, 1例を術後10年目に心不全で失った以外, 4例では症状改善を得, このうちのIIb型1例は術後15年目Fontan手術を行い成功している. Ebstein病は5例に施行し, 手術死2例, 遠隔死3例であり, 本症では心房中隔欠損と三尖弁逆流の修復を行わない限り, 症状改善は得られないものと考える. その他, 両大血管右室起始症1例(術後16年), 単心室1例 (術後6年, プレーロック吻合術後出血死), 総動脈幹1例(手術死), 心内膜床欠損症1例(術後6年僧帽弁修復とASD閉鎖)である. Glenn手術は遠隔期にいくつかの問題点を有するが, 長期生存は可能で, 十分に症状改善と延命効果の得られる術式であり, 三尖弁閉鎖症, 単心室など乳幼児期重症例には, 今後とも適応となり得る術式である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : チアノーゼ性心疾患, 上大静脈一肺動脈吻合術(Glenn手術), Glenn手術後根治手術, 静脈系側副血行路, 肺動静脈痩
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