アブストラクト(31巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁狭窄症の手術前後における133Xeを用いた局所肺機能の変動
Subtitle : 原著
Authors : 倉田直彦, 草川實
Authors(kana) :
Organization : 三重大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 3
Page : 333-344
Year/Month : 1983 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 僧帽弁狭窄症症例27例を対象とし, 手術前後に行った133Xeを用いた局所肺機能検査から単位肺容量当たりの血流分布, 換気分布及び換気血流比分布を求め, これらと手術前後の血行動態及び総合単機能検査の成績とを対比検討した結果, 以下に示す興味ある成績を得た. 1. 僧帽弁狭窄症における術前肺血流分布は4型に分類され, 肺動脈楔入圧の上昇に伴い分布は上下逆転傾向を示したが, 肺動脈楔入圧が30mmHg以上の症例では上下の逆転は消失し, 全肺で均一な分布を示すようになった. 2. 術前換気分布は, 肺血流分布のI型, II型及びIII型を呈した症例では正常分布を示し, IV型では全肺で均一な分布を示した. 3. 肺血流分布のIV型を呈した症例では, 著しい肺高血圧と肺血管抵抗の上昇を認め, 総合肺機能検査成績では, %肺活量の低下, 機能的残気率の増加及び動脈血酸素飽和度の低下を認めた. 4. 術後の変動では, 肺血流分布では, 術前上下逆転の認められたII型及びIII型の症例では, 術後遠隔期において正常分布に改善を認めたが, IV型を呈した症例では, 著明な改善を認めなかった. また, IV型の術後血行動態の変化では, 中等度の肺高血圧と肺血管抵抗の増大が残存しており, 総合肺機能検査の成績でも正常域へは改善を認めなかった. しかしながら, 換気分布異常は, 術後遠隔期においては正常へと改善を示した. 5. 僧帽弁狭窄症の手術適応に当たり, 133Xeを用いた局所肺機能検査は, 術前に本症の術後血行動態の改善に伴う肺の血流分布及び換気分布の改善度を予測する上で, 極めて有用な検査法である. また, 今回の著者の成績からみると, 僧帽弁狭窄症では換気分布が正常であり, 血流分布がIII型までの時期に手術することが本症の術後遠隔期の予後の点から重要であると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁狭窄症, Xenon-133, 局所肺機能, 肺血流分布, 換気分布
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