アブストラクト(31巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 経皮的右心房穿刺による右心房内カテーテル 電極固定法に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 藤原嗣允, 小松作蔵
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学外科学第2講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 3
Page : 364-376
Year/Month : 1983 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 経皮的右心房穿刺によるカテーテル電極固定法(以下, 右心房穿刺法と略す)の術中, 術後及び遠隔期における合併症について, 雑種成犬6頭による動物実験と, 28例の臨床例を対象として検討した. 更に, 長期間の電極機能の安定性についても検討を加えた. また, multiprogrammable pacemakerを植え込んだ5例を対象として, 右心房の電気刺激閾値(以下, 刺激閾値と略す)と右心房心内膜電位 (以下, 心内膜電位と略す)の経時的変化についても検討した. 実験では, 右心房の上, 中, 下部にそれぞれ電極を固定したが, 下部を穿刺した2頭のうち1頭では, 冠状溝付近を固定系が穿通していた. 従って, 下部への穿刺では, 右冠状動脈の損傷又は電極による右冠状動脈の圧迫を生じる可能性があると考えられた. 臨床例では, 28例中5例(17.9%)に, 軽度の気胸が生じたが, 他の合併症は認められなかった. また, 遠隔期においても, 電極による右心房穿孔などの合併症は認められなかった. 28例中25例では最短1カ月より最長52カ月, 平均24.2±3.1カ月を経過しているが, いずれも電極機能は安定している. 残り3例のうちの1例は, 不完全房室ブロックへの進展のため, 術後1カ月で右心房ペーシングが無効となり, 他の2例は心房同期型ペースメーカーの使用例であるが, 術後1カ月で同期不全となった. 手術時の刺激閾値は, パルス幅0.5, 1.0msecの場合, 各々1.1±0.1(n=5), 0.8±0.1volt(n=5)であった. 2週後には手術時の3~4倍と最も高くなり, 以後次第に低下し, 4カ月後からその値は安定し, 1.7±0.2(n=5), 1.3±0.2volt(n=5)となったが, これは心室ペーシングの場合の経時的変化と同様の傾向であった. 手術時の心内膜電位は, 平均(±)6.4±0.5millivolt(n=5)で, 1カ月以後では5例とも+0.7millivoltあるいは-1.1millivolt以上の電位があると推測できた, 以上の結果より, 右心房穿刺法は手技も容易であり, しかも重大な合併症を伴わずに, 長期間にわたって安定した電極機能を維持できる有用な方法といえる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心房内電極固定法, 右心房心内膜電位, 右心房電気刺激閾値, 心房ペーシング, 洞不全症候群
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