アブストラクト(31巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 外科的房室ブロック作製術に関する研究 その適応と方法について
Subtitle : 原著
Authors : 池下正敏
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学第2外科胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 4
Page : 419-431
Year/Month : 1983 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 頻脈性不整脈に対する外科的治療の1つである外科的房室ブロック作製術の効果と安全性について, 2例の臨床経験を基に, 24頭の実験犬に3種類の作製術(縫合法, 切断法, Cryosurgery法)を実施し比較検討した. 1) 頻脈性心房細粗動をもつ2臨床例に対して体外循環下に切断法による外科的房室ブロック作製術を実施し, 合併症もなく治療の目的を達した. 手術の適応が十分検討された後, 決定されるならば外科的房室ブロック作製術は頻脈性不整脈に対する有効な治療となると考える. 2) 外科的房室ブロック作製術の成功率は縫合法83.3%, 切断法80%に比し, Cryosurgery法は100%であり, 且つ術中死亡例を認めなかった. 3) 合併症については縫合法では2例において三尖弁中隔尖の縫合手技による損傷が, 切断法では2例において手術操作による心房又は心室中隔穿孔が認められた. 縫合法の1例と切断法の2例は死亡したが合併症がその直接誘因と推定された. Cryosurgery法では合併症を認めなかった. 4) 外科的房室ブロック作製術後にHis束心電図を測定し得た全例でAHブロックを示した. この事実より房室結節His束接合部又はHis束中枢部でブロックが作製されHis束リズムが発生したと推定された. 5) 各房室ブロック作製法ともQRS幅は術前に比較し, 術後では有意の延長を示した. HV時間の延長はなかった. 実験犬の心臓に対し解剖学的に比較的広範な障害が加わり右脚ブロックが発生したためと推定された. 6) 術中のHis束マッピング, 又はあらかじめ挿入しておいたHis束カテーテル電極によるHis束電位の測定は, 房室結節His束接合部の位置に関する情報を得るのに有効であった. Cryosurgery法では温度の調節により房室伝導へ可逆性の変化を加えることが可能で, His束マッピングと同じ効果を期待できる. 以上よりCryosurgery法は有効で安全な房室ブロック作製法であると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 上室性頻拍, 外科的房室ブロック作製術, Cryosurgery法, His束リズム, 人工ペースメーカー植込み
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