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開心術中のglobal cardiac ischemia(GCI)に対するコエンザイムQ10(CoQ10)の心筋保護効果を人為心室細動法により作成したGCIラットを用いて実験的に検討した. GCIの作成は, 両側胸壁に各1本の針電極を刺入し, 1分間の8ボルト交流通電を2回反復することにより行った. 通電開始と同時に心室細動が発生し, 血圧は0になったが, 通電中止により通常自然に洞調律に復帰した. 実験群は, 前処置として通電の30分前にCoQ10 5mg/kgを静注したQ10群(12匹)と, その溶媒のみを同量静注した対照群(12匹)とに分けた. 組織学的検索では, 各群5匹ずつを上記の通電の5日後に屠殺して心臓から組織標本を作成し, 光顕的及び電顕的観察を行った. また心機能の検討のために, 各群7匹ずつを通電による心室細動から回復した直後に心摘出を行い, Neelyの心灌流装置による灌流実験を行った. 灌流液にはO2 95%, CO2 5%の混合気と平衡させたKrebs-Henseleite buffer液(pH 7.4, 38℃)を用いた. CoQ10前投与の有無による両群間の心機能の差異をより明らかにするために, 灌流中に更に冠血行遮断下の頻回ペーシング負荷(333ppm)を20分間行い, 解除後(再灌流期)の心機能の回復状況を観察した. 主要な組織学的所見は間質の浮腫及び心筋のフィブリノイド変性であったが, Q10群では対照群に比してこれらの所見が軽度であり, 特に浮腫の有意の減少が認められた. 心灌流実験では, Q10群は再灌流開始から心拍再開までの時間(心蘇生時間)が対照群に比して有意に短く, 蘇生後の大動脈圧, 冠血流量, pressure-rate product(大動脈収縮期圧×心拍数)のいずれも対照群より有意の高値が保たれた. 以上の成績から, 実験的に作成したラットのGCIに対し, CoQ10の前投与が有効な心保護作用を有するとの結論が得られた. |
