アブストラクト(31巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 動脈硬化性血管病変における選択的冠動脈造影法の意義
Subtitle : 原著
Authors : 数井暉久, 小松作蔵, 佐々木孝, 渡辺祝安, 横山秀雄, 山口保, 泉山修, 原田英之, 田中明彦, 塚本勝
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 4
Page : 440-445
Year/Month : 1983 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 動脈硬化性血管病変80例に対して選択的冠動脈造影法を施行し, 冠動脈病変の合併頻度を検索した. 対象の年齢は40~77歳, 平均61.5歳, 性別は男性69例, 女性11例であった. 血管病変の内訳は胸部大動脈瘤(TAA)12例, 腹部大動脈瘤(AAA)16例, 腹部大動脈・腸骨動脈閉塞症(A-I)37例, 大腿・ 膝窩動脈閉塞症(F-P)15例であった. 冠動脈硬化の危険因子として糖尿病20%, 高血圧71%, 喫煙79%, 高脂質血症を33%に認め, また臨床所見として狭心痛45%, 心筋梗塞の既往19%, 心不全の既往8%, 心電図上の異常所見は56%に存在した. これら臨床所見の少なくとも1つ以上を有し冠動脈心疾患の合併が疑われた症例は全体で63%であった. 冠動脈造影所見上では全体の51%に75%以上の有意の狭窄病変が主要冠動脈枝の1枝あるいはそれ以上にみられた. なお, 疾患別ではTAA群42%, AAA群50%, A-I群62%, F-P群33%に有意の冠動脈病変を合併していた. TAA及びAAAの拡張性病変群は46%, A-I及びF-Pの閉塞性病変群は54%であり, 両群間にはその頻度に有意差はなかった, 冠動脈硬化の危険因子別では糖尿病75%, 高脂質血症73%, 高血圧56%, 喫煙51%, 2つ以上の因子を有するもの61%に有意の冠動脈病変が存在した. また臨床所見別では狭心痛78%, 心筋梗塞100%, 心不全の既往63%, 心電図上の異常所見78%, 及びこれらの臨床所見を少なくとも1つ以上有し, 臨床的に虚血性心疾患の存在が疑われる症例では74%に有意の冠動脈病変が合併していた. 一方臨床的に冠動脈心疾患の存在が疑われない症例でも13%に有意の冠動脈病変が認められた. 動脈硬化性血管病変においては, 血行再建術の適応, 術式の選択あるいは術前後の循環系リスクを予測するためには術前に選択的冠動脈造影法を施行することが重要であると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 動脈硬化性血管病変, 選択的冠動脈造影法, 有意の冠動脈狭窄病変
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