アブストラクト(31巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心機能に及ぼす低温, Kイオン濃度及びCaイオン濃度の影響について -ラット摘出心working heart modelを用いての検討-
Subtitle : 原著
Authors : 富永隆治, 川内義人, 神田好雄, 徳永皓一
Authors(kana) :
Organization : 九州大学医学部心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 4
Page : 446-457
Year/Month : 1983 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 左房圧可変のラット摘出心working heart modelをNeelyらの報告をもとにして独自に作製し, まず第1にその安定性, 特性につき検討を加えた. 次いで, この装置を用いて, Kイオン, Caイオン, 温度などの心機能に及ぼす影響を心筋保護の立場から検討した. 左房圧12cmH2Oでworkingさせた時の心拍出量は, コントロールで76±2ml/min/heart, working60分でコントロールの98%, 120分でも83%が維持されていた. 大動脈圧はコントロールで102±2mmHg, working120分で91±3mmHgと漸減したが, 心拍数は漸増し, double productは不変であった. 左房圧を上昇させると心仕事量は増加し, 酸素消費量も増加した. 酸素消費量の増加は, 酸素摂取率と冠灌流量の両者の増加によってもたらされた. 心筋組織中の高エネルギー燐酸化合物は高値に保たれ, 乳酸, グルコース6燐酸の上昇も認められなかった. 晶液性の灌流液ではあるが, 酸素供給は十分であり, 嫌気性代謝の亢進はないと考えられた. 灌流液温を低下させると心拍出量は著明に減少し, 25℃でコントロールの52%, 15℃で14%であった. 心拍数は, コントロールで212±10bpm, 25℃で101±8bpm, 15℃で35±3bpmと減少し, 平均8.5℃で心停止を来した. K+濃度を10mMに上昇させると心拍数はコントロールの88%に, 心拍出量は92%に各々減少した. 心停止時の温度は平均17.3℃であった. Ca++濃度を0.5mMに低下させると心拍出量, 心拍数は各々, コントロールの62%, 72%と減少した. K+10mM, Ca++0.5mMの灌流液組成にすると心拍出量の低下は更に著明でコントロールの20%となった. 心停止の温度は平均22.3℃であった. 心機能低下には, 温度低下, K+濃度上昇, Ca++濃度低下が相乗的に作用すること, 及び心停止を来す心筋温にもK+, Ca++が相乗的に影響を与えることが認められた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ラット摘出心working heart model, 心筋保護, 低温, Kイオン濃度, Caイオン濃度
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