Abstract : |
肺血流減少型心疾患に対する姑息手術として, EPTFE graftを用いた体-肺動脈短絡術を行った症例を検討したので報告する. 昭和54年5月より57年7月までに行ったファロー四徴症8例, 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖3例, 純型肺動脈閉鎖2例, 三尖弁閉鎖, 単心室, 大血管転位等合併の複雑心奇形10例の計23例を対象とした. 年齢は36時間より20歳. 手術方法は, 1) interpose法, 2) modified Blalock法, 3) central shunt法のいずれかを行い, 使用人工血管は, 4, 5, 6mmの3種類のいずれかを1~5cm長用いた. 手術死亡1例. 術後合併症は漿液性心のう液貯留2例, 血胸1例を認めた. 生存22症例中EPTFE graft shunt開存19例, 閉塞3例であった. 閉塞例のうち, 1例は経過観察中, 1例は再短絡術中死亡, 1例 はEPTFE graftを用いた再, 再々短絡を行った. 遠隔期開存率は88%であった. なお, 閉塞例はいずれも4mm graftであり, 使用した4mm graftの40%が閉塞した. また, 遠隔期開存例では, 酸素飽和度の上昇, 血中Hb値の低下, 無酸素発作の消失, 運動能力の上昇が明らかに認められ, その手術効果の良好なことを示している. 教室では, 現在, 体-肺動脈短絡術として, Blalock手術を原則とし, Waterston, Potts手術は放棄している. 技術的, 解剖学的にBlalock手術が不可能な例に対してはEPTFE graftによる短絡術を選択している. その手術方法は, 新生児, 乳幼児期例, 将来根治術が可能な年長児期例に対しては, interpose法又はmodified Blalock法を原則とし, より多くの短絡量を必要とする年長児再短絡例や現時点では根治術不可能な複雑心奇形合併の年長児期例に限りcentral shunt法を適応とするのがよいと考えている. しかも, いずれの手術方法においても, 5mm以上のgraftを選択すべきであろう. 特に, 根治術不可能例に対するcentral shunt法は, 著明な自覚症状の改善が期待できる良好な姑息手術と思われる. |