アブストラクト(31巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Ionescu-Shiley bovine pericardial xenograft valve (ISPX)による房室弁置換術の経験- Bjork-Shiley弁・SJM弁との弁機能の比較検討
Subtitle : 原著
Authors : 小机敏昭, 久米弘洋, 松井道彦, 鈴木茂, 丸山浩一, 杉田洋一, 中村譲, 中野雅道, 佐々木達海, 宮沢総介, 古川仁, 森田紀代造, 鈴木和彦, 新井達太
Authors(kana) :
Organization : 東京慈恵会医科大学心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 4
Page : 480-489
Year/Month : 1983 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : ISPXによる房室弁置換術を32症例に施行した. 内訳は, MVR 15例, MVR+TAP 4例, MVR+*AVR 8例, MVR+TVR 4例, MVR+TVR+*AVR 1例である. 但し*AVRにはBjork-Shiley(BS)弁を使用した. 手術成績は早期死6%, 晩期死3%であった. 術後血行動態に関し検討を加え, 更に我々が行ったBS弁・SJM弁によるMVR症例のそれと比較し, 以下の結論を得た. (1) 術後ICU入室時から72時間の心係数(CI), 左室仕事量指数(LVSWI)の変動は安定して良好な経過であり, BS弁・SJM弁に比しCI, LVSWIとも高値を呈した. (2) 術後NYHA分類の改善は顕著であった. (3) MVR+TVRのISPXによる2弁置換症例で, 軽度溶血がみられた. (4) LA(mean)-LVEDPは, 弁サイズ29mmで1.6±1.2mmHg, 31mmで3.0±0.8mmHgと良好であったが, 弁サイズ27mmでは1~20mmHgの間でばらつきがみられ, 個々の弁で差が大きかった. (5) 遠隔期血行動態をみると, PCWP, LVEFの改善が著明で, それぞれ術前23.0±4.2mmHgから術後13.7±2.1mmHg(p<0.05), 0.52±0.04から0.65±0.03(p<0.05)であった, (6) 右室ペーシング法による遠隔期血行動態を検討すると, ISPXでは安静時CO 3.95±0.35L/min, 僧帽弁口面積(MVA)1.03±0.13cm2から120/分で4.94±0.51L/min, 1.65±0.34cm2まで増加, 150/分では3.56±0.61L/min, 0.99±0.30cm2であった. 同様の方法で測定したBS弁・SJM弁では頻拍になるほどCO, MVAとも低下しているが, これはISPXと対称的で, ISPXの弁機能は頻拍になるほど良好となることを示した. これは, 弁サイズ29mm以上のISPXで著明であった. (7) 遠隔期の経過観察には心エコー図が有用で, 特に断層法で各弁尖の開閉状態が詳細に観察できた. (8) ISPXの耐久性・血栓塞栓症・感染などに関しては現在のところ問題はみられないが, 今後の長期経過観察が必要である. 以上, ISPXの弁機能は良好で, BS弁・SJM弁に比し頻拍時にその特徴を有していた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Ionescu-Shiley pericardial valve, atrio-ventricular valve replacement, 弁機能検査, Bjork-Shiley弁, SJM弁
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