アブストラクト(31巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 異型狭心症の外科治療に関する研究
Subtitle :
Authors : 島本光臣
Authors(kana) :
Organization : 市立静岡病院胸部心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 6
Page : 828-838
Year/Month : 1983 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 器質的高度狭窄を有する冠動脈に攣縮(スパスム)が加わる異型狭心症20例にA-Cバイパス術を施行した. 20例を手術法と手術近接期スパスム予防法により, I群(A-Cバイパス+adventitial stripping, ISDNの間歇的舌下投与)3例, II群(A-Cバイパス, ISDNの間歇的舌下投与)13例, III群(A-Cバイパス, Diltiazem 1.5μg/kg/min持続静注)4例に分類し, その手術成績などについて検討を加えた. 3群間に, 手術近接期スパスム発生率(33%, 31%, 0%), 手術近接期心筋梗塞発生率(0%, 31%, 0%), 手術死亡率(0%, 8%, 0%), グラフト開存率(100%, 67%, 100%)の差を認めた. そして異型狭心症に対するA-Cバイパスの術後早期成績不良の原因は手術近接期スパスムによるものと判明した.手術近接期スパスム発生の5例中4例は制御が困難であり, 1例が制御不能のため死亡した. 従って, 異型狭心症の手術成績を向上, 安定させるためには, スパスム予防法を確立することが最も重要と考え, 術前, 中, 後にわたり, Diltiazem持続静注法を検討し, 好結果を得た. 血行動態と血漿中濃度の測定によって, 前日よりのDiltiazem1.5μg/kg/minの持続静注は安全であり, ほぼ240mg/日の経口投与に相当する血漿中濃度を維持し得ることが判明した. しかし対外循環離脱時血漿中濃度は希釈により約58%に低下するため, 何らかの方法でDiltiazemの追加が必要である. 術後遠隔期に21%に狭心発作を, 11%に心筋梗塞の発症をみた. adventitial strippingの効果には疑問があり, また, 高度器質的冠動脈狭窄を有する症例においても, 術後カルシュウム拮抗剤の投与は欠かせない. Diltiazem持続静注法は異型狭心症に対するA-Cバイパスの手術向上のため, 現在最も有効な方法と考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 異型狭心症の外科治療, 手術近接期冠動脈攣縮, A-Cバイパス, Diltiazem持続静注, adventitial stripping
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