アブストラクト(31巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冠動脈バイパスgraft径の大きさ:遠隔期開存率及び流量に及ぼす影響についての実験的研究
Subtitle :
Authors : 森下靖雄, 平明
Authors(kana) :
Organization : 鹿児島大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 6
Page : 857-862
Year/Month : 1983 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 冠動脈バイパスgraftの適切な径の大きさについての明確な結論はまだ出ていない. そこで, 遠隔期開存率, 流量に及ぼすgraft径の影響について, 実験的に検討した. 雑種成犬の一側femoral vein(FV)をlarge graft, medial saphenous vein(SV)をsmall graft として使用し, 同一犬の一側femoral artery(FA)へlarge graft, 他側FAへsmall graftを端側吻合で移植した. graft(A), FAの吻合中枢側(B), 及び吻合末梢側(C)で血流量を, 同時にFA圧を測定した. 血流開始後のsmall及びlarge graftの径はそれぞれ平均3.6mm, 8.2mmで, これらを吻合したFAの径は中枢側・末梢側で, それぞれ平均3.5mm, 3.2mmであった. 移植10日目の血管造影でgraft開存の12頭を2群に分け, 1群6頭は6ヵ月, 2群6頭は1年間の生存期間後に第2回目の血管造影を施行, 同時にA, B, Cで血流量を測定し, 屠殺後graft及びFAを組織学的に検索した. 12頭全例の大小graftの開存性は第2回目の血管造影でも確認された. また, small graftでの造影剤の通過時間はlarge graftにおけるより早く, large graftでの造影剤の停滞が示唆された. graft内血流量を絶対値及び%flow(graft血流量/proximal FA血流量×100)から検討したところ, 6ヵ月及び1年後のそれらは大小graft間で有意の差はなかった. 組織学的には大小graftともに, 軽度ないし中等度の動脈化を示し, 筋内膜細胞増殖 , 基質組織の増生, 弾性組織の欠除などの変化が種々の程度にみられた. 今回の実験から, (1)graftと被移植血管間の大きさの一致は, graft内血流の早い流速をもたらす, (2)遠隔期開存率及び流量と, 大小graft間には相関関係を見いだすことはできない, の結論が得られた. これらの結果は臨床での冠動脈バイパスでのgraftの選択に参考の資料を提供し得ると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 冠動脈バイパスgraft, graft径の大きさ, 遠隔期開存率及び流量
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