アブストラクト(31巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 異種生体弁による僧帽弁置換術の遠隔成績について
Subtitle :
Authors : 数井暉久, 小松作蔵, 佐々木孝, 星野豊, 渡辺祝安, 横山秀雄, 山口保, 泉山修, 原田英之, 田中利明, 塚本勝
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 6
Page : 882-889
Year/Month : 1983 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1974年6月より1982年6月までの間に施行した異種生体弁(Hancock弁78例, Liotta弁25例)による僧帽弁置換術(MVR)103例の遠隔成績について検討した. 対象103例のうち49例(48%)は再弁手術例であり, また24例(23%)に合併手術を施行した. 術後1ヵ月以内の早期死は全体で12例(11.7%)であるが, MVRのみでは5.1%, 合併手術例では33.3%であり後者の死亡率は高かった(p<0.01). 早期死を除く91例の平均3.6年, 最長7.7年, 累積追跡期間325patient-yearの遠隔追跡では, 生存74例, 晩期死17例(5.2%per patient-year)であった. 早期死亡率を含む5年生存率は全体で69.1%±6.7%及び7年生存率は64.2±4.8%であった. 弁種別では長期生存率に差は認められなかったが, 術式別では5年生存率がMVRのみ77.0%±5.7%, 合併手術例41.8%±10.7%であり, 前者の成績が良好であった(p<0.01). 遠隔期における弁機能不全は6例(1.8%per patient-year)に認め, このうちいわゆるprimary tissue failureは3例, 感染症心内膜症による晩期死は1例, 晩期の逆流性雑音の出現は2例であった. なおprimary tissue failureのうち2例は小児例であった. 弁機能不全のevent-free rateは5年91.9±3.9%, 7年86.5%±4.0%であった. 血栓塞栓症は11例(3.4%per patient-year)に認め, いずれも心房細動例でありこのうち5例は致死的脳塞栓症であった. 血栓塞栓症のevent-free rateは5年で88.2%±3.4%, 7年で83.0%±4.7%であった. Glutaraldehyde処理異種生体弁によるMVRにおいては, 巨大左房, 心房内血栓を有する心房細動例には半永久的な抗凝血剤投与が必要である. また異種生体弁の耐久性に関しては, 成人例では術後7年に至る遠隔追跡にても問題はなかったが, 弁機能不全の発生に対しては更に長期の注意深い観察が必要である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 異種生体弁, 僧帽弁置換術, 弁機能不全, 血栓塞栓症, primary tissue failure
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