アブストラクト(31巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後の低心拍出量症候群(LOS)における肺循環
Subtitle :
Authors : 公文啓二1), 田中一彦1), 江郷洋一1), 鬼頭義次2), 内藤泰顕2), 藤田毅2)
Authors(kana) :
Organization : 1)国立循環器病センターICU, 2)国立循環器病センター心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 6
Page : 890-899
Year/Month : 1983 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 低心拍出量症候群(LOS)は, 心拍出量の減少に伴う酸素需要-供給バランスの破綻であると定義されている. しかし酸素供給の不可欠因子である肺循環のLOSでの動態については多くを知られていない. 本研究は, 心係数(CI)が2.0l/min/m2未満のLOSを呈した41例の成人開心術後症例を対象にLOSにおける肺循環についての検討を行った. LOSでのCIは1.64±0.28(Mean±SD)l/min/m2で, 改善後は2.60±0.50l/min/m2へと有意に上昇した(p<0.001). 酸素供給量はLOSで324±56ml/min/m2と著明に減少しておりO2extraction ratioは0.36±0.10であった. 改善後との比較において, LOSでは平均肺動脈圧(PAm), 肺動脈抵抗係数(PARI)及び総肺抵抗係数(TPRI)はいずれも有意に高く(p<0.001), 肺血管抵抗の増大が認められた. またCIとPARIにはr=-0.574の相関を得た. 更にLOSでは, Pao2は445±74Torr(Fio2:1.0)と高く, A-aDO2は233±75Torr, Qs/QTは11.4±6.5%と低値であった. LOS改善後はPao2は有意に低下し(p<0.001), A-aDO2も拡大(p<0.001), Qs/QTは20.8±7.7%と約2倍に増加した(p<0.001). CIとPao2にはr=-0.478の逆相関, CIとシャント血流量(Qs)にはr=0.7465の相関を得た. またQs/QTとPao2にはr=-0.7864, A-aDO2とはr=0.7841の相関を得た. 以上の結果, LOSでは減少した酸素供給量に対する代償反応として肺胞低換気部でのpulmonary vasoconstrictionが発現し, 動脈血酸素化の向上が得られることが示唆された. pulmonary vasoconstrictionの発現機序として, Pvo2とQs/QTにはr=0.6901の相関が得られ, 混合静脈血のhypoxemiaが一因として関与する可能性がある. 更にLOSでみられる交感神経やreninangiotensin系の関与も推察される.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 低心拍出量症候群, 肺循環, 開心術, 酸素輸送, Pulmonary vasoconstriction
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