Abstract : |
三尖弁閉鎖症に対する機能的根治手術は, 右室不使用術式(右房-肺動脈吻合術)と右室使用術式に2大別される. 両者の血行動態的特徴・差異そして, 右室使用術式の選択意義を明確にする目的で, 雑種成犬を用いて慢性実験を施行し, 以下の結論を得た. すなわち, 三尖弁閉鎖症に対する機能的根治手術においては, (1)いずれの術式でも, 一定の心拍出量を得るためには, 通常より高い右房圧を必要とする. (2)いずれの術式でも, 同一の平均肺動脈圧において示される心拍出量は同一である. (3)右室不使用術式(右房-肺動脈吻合術)では, 右房のpumping作用は, 心拍出量を増加する因子とはならない. (4)右室使用術式では, 右室不使用術式に比し, より高い平均肺動脈圧更に, より大きな肺動脈-左房平均圧較差が示され, より多くの心拍出量が得られる. (5)右室使用術式では, 有効右室容積が大きいほど, 多くの心拍出量が得られる. (6)右室使用術式では, 右室右房逆流及び肺動脈右室右房逆流の存在は問題とならず, 右房-右室間及び右室-肺動脈間のいずれにも, 人工弁を挿入する必要はない. 但し, 右室流出路狭窄の残存は大きな問題となり, 狭窄残存を伴う術式は, 右室不使用術式に比し, むしろ不利になり得る. (7)総合的にみると, 右室使用術式は, 右室不使用術式よりも, 血行動態的に有利である. |