アブストラクト(31巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 超低体温体外循環の適正灌流条件に関する研究 -血液ガス動態, 代謝性変動からみた適正灌流量に関する実験的検討-
Subtitle :
Authors : 奥田彰洋, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 7
Page : 1057-1069
Year/Month : 1983 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 冷却した血液を用いて体外循環を行う超低体温体外循環(DHCPB)においては, 生体の酸素消費量Vo2の低下に伴い灌流量の減量が可能と考えられるが, その適正灌流条件はいまだ明らかではない. 既に著者らは20℃DHCPBにおいて, 灌流量とVo2との関連を検討し, 20℃DHCPBにおいて最大酸素摂取を満たす灌流量は60ml/kg/min以上であり, 30ml/kg/min以下ではVo2は有意に低下していることを認めた. 本研究においては20℃DHCPBにおける適正灌流条件を求めることを目的として, 雑種成犬30頭を用い, 灌流量60ml/kg/min(l群), 30ml/kg/min(II群), 15ml/kg/min(III群)で4時間の20℃DHCPBを行い, この間, 及び復温過程の血液ガス動態, 代謝性変動について実験的に検討し, 以下の結果を得た. 1) 20℃DHCPB中のVo2はI群では1.04±0.14~1.12±0.12, II群では0.86±0.11~0.88±0.07, III群では0.70±0.05~0.72±0.05ml/kg/minで各群のVo2には有意な差が認められた(p<0.001). 2) II, III群においては復温開始後早期にDHCPB中のVo2の差に対応する酸素負債の存在を示唆するVo2の有意な変動が認められた. この変動はIII群においてより著明であった. 3) 20℃ DHCPB中の全身炭酸ガス排泄量(Vco2)には各群間に有意差を認めなかったが, 復温開始後早期にはII, III群のVco2はI群のVco2に比し有意に高値を示した. 4) I群においては20℃ DHCPB中pH, BE等酸塩基平衡, 乳酸, excess lactateなど代謝面の変動は他群に比し軽度で, 復温時にはより良好な改善傾向が認められた. 5) これらの血液ガス動態, 代謝性変動から, I群では20℃ DHCPB中, 十分好気的代謝が行われており, 測定されたVo2は生体の酸素需要に一致していると考えられた. 6) 以上の成績より20℃DHCPBを行った3群の灌流量のうち, 血液ガス動態, 代謝面の変動からみた適正灌流量は60ml/kg/minと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 超低体温体外循環, 全身酸素消費量, 酸素負債, 全身炭酸ガス排泄量, 適正灌流量
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