Abstract : |
tilting disc弁の代表であるBjork-Shiley弁とbioprosthesisの代表であるCarpentier-Edwards弁を用い, 流動特性からみた僧帽弁の縫着法について考察した. C-E弁はsequential openingを示し, RCCの開放が最も遅れた. その圧損失曲線は1弁尖の開放が加わるごとに勾配を減じ, 三つのべき関数曲線の連続した曲線として示された. RCCを流路中心軸に傾けるほど各弁尖の開放は早期に生じ, 圧損失も減少した. これに対し, B-S弁の圧損失曲線は一つのべき関数曲線を示し, 閉鎖子が流路中心軸と平行に開放するように傾けるほど, 圧損失は減少した. C-E弁はLCCを流出路に向けて縫着するように指示されている. しかし, 指示通りに縫着すると, 後方に位置するRCCとNCCの開放不全が2例にみられ, 術後拡張期rumbleが2例に聴取された. そこで, 前述の実験結果に基づき, 動きの悪いRCCを流出路に向けて縫着すると, 3弁尖の開放は良好となり, 人工弁の中心軸と流路中心軸とのずれ角度が大きくてもrumbleは聴かれなかった. 更に, 左心室への血流は心尖方向に向く結果を得た. これはMVRを必要とする僧帽弁輪の中心軸が前方に向いており, RCCを中心軸方向に傾けて縫着する結果となるからである. B-S弁は大きな弁口側を後方に向けて縫着することにより, 血流は心尖方向に向く. 更に, 後尖の基部腱索を十分に切離し, 後方は人工弁の縫合輪の基部近くに糸を通し, 僧帽弁輪とともに左心房後壁を大きくひろって縫着する. 前方は人工弁の縫合輪の端に浅く糸を通して縫着する. 以上の操作により人工弁の方向は心尖に向き, 左心室への流入血流は心尖に向かう生理的流れが得られた. このようにMVRは人工弁の特質を生かし, 左心室や僧帽弁の形態と機能にmatchさせるような縫着への細かな配慮が, 人工弁機能をより良くするとともに人工弁機能不全をも減少させることになる. |