アブストラクト(31巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : A-C Bypass術の臨床的研究
Subtitle :
Authors : 中島昌道, 清水健
Authors(kana) :
Organization : 金沢医科大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 7
Page : 1123-1140
Year/Month : 1983 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : A-C Bypass術の目的は, 動脈硬化性病変に基づく器質的冠動脈狭窄の解除にあるが, vasospasmの要素も考えなければならない. 本論文は, 虚血性心疾患の外科治療において, その成因を考えると同時に, 冠動脈spasmによる機能的狭窄から器質的狭窄に至る一連の病態に対して, A-C bypass術の有効性を検討しようと試みたものである. A-C bypass術のみを施行した72例を, 詳細な臨床像の分析によって以下の4群に分類した. I群: 発作時心電図でST-上昇を示す安静狭必症で, 夜間の睡眠中にも発作を有する(8例). II群: ST-上昇を示す安静狭心症であるが, 夜間の睡眠中には発作を認めない(15例). III群: ST-降下を示す安静狭心症で, 極めて軽い労作で容易に誘発される(18例). IV群: 古典的労作性狭心症(31例). I群は, 冠動脈病変が軽度にもかかわらず, グラフト開存率は70%, 術中梗塞発生率は50%と悪く, またグラフト開存の有無に関係なく, 術後にも発作が存続した. 夜間安静時にST-上昇を伴う発作を有する例は, 冠動脈の器質的狭窄もさることながらspasmの要素も強く, 術後に重篤な合併症を引き起こす可能性がある. II群は, 冠動脈spasmの要素も有するが, 器質的狭窄が主体であり, 臨床症状は重篤であるが, 冠動脈末梢run-offの良好なことから, 手術成績は 良好で, A-C bypass術の効果は著明に表れる. III群は, 冠動脈の器質的病変が最も強く, 多枝障害で分枝にも障害を有することが多く, 手術成績もグラフト開存率74%, 術中梗塞発生率35%と不良である. 完全血行再建や心筋保護などに留意し, 手術手技の向上が最も要求される群である. IV群は, 陳旧性梗塞が87%にみられたが, 手術合併症も少なく安全に施行できる. 術後の左室機能の改善も良好であった. A-C bypass術を施行するにあっては, 冠動脈の器質的障害を考慮するだけでは不十分で, 冠動脈spasmの存在も念頭に入れ対処しなければならない. ST-上昇を示すI群のように, spasmの要素が強い例にはA-C bypass術のみではなく, 術中・術後の合併症を考慮して, 何らかの対策が必要で, またIII群のような器質的障害が強度な例には, 手術手技の熟達が望まれる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Nocturnal angina, Coronary vasospasm, Unstable angina pectoris with S-T elevation or depression, Perioperative myocardial infarction
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