Authors : |
鬼頭義次1), 藤田毅1), 小原邦義1), 小坂井嘉夫1), 川副浩平1), 土師一夫2), 斉藤宗靖2), 平盛勝彦2), 西村恒彦3), 植原敏勇3), 小塚隆弘3), 曲直部寿夫3) |
Abstract : |
元来冠血流供給障害に基づく心筋血流分布異常は虚血性心疾患の本態を成し, ACバイパスの適応決定に当たって冠動脈造影よりみたanatomical indicationとともに心筋血流異常よりみた適応, すなわちfunctional indicationを考慮することが重要である. そこで本稿ではACバイパス術を施行した43例を対象とし運動負荷RI心筋シンチグラフィー法を用い, 虚血心筋とviability及びその責任血管よりみたACバイパスの適応について検討するとともにその効果に対して評価を試みた. 運動負荷RI心筋シンチグラフィーによるACバイパスの適応を各冠動脈病変ごとにその支配領域の虚血, 再分布及び心筋梗塞の有無より, A群: 運動負荷により生じた虚血心筋へ安静時に再分布を示す再分布群, B群: 運動負荷により生じた虚血心筋へ安静時に再分布を示さない非再分布群, 及びC群: 運動負荷により虚血変化を示さない正常群, と3群に分類し, 心筋梗塞非合併及び合併を各々a, b群とした. 更にACバイパスの効果を術前評価と同様I群(正常群), II群(再分布群), III群(非再分布群)の3群に分類し, 非梗塞群をa, 梗塞群をb, perioperative myocardial infarction群をCとした. 非梗塞領域へのバイパスについてみると再分布群(Aa), 非再分布群(Ba)で著効は各々81%, 55%で再分布群の効果が優れていた. 梗塞領域へのバイパスについてみると再分布群(Ab), 非再分布群(Bb)で有効は各々60%, 20%と非梗塞群と同様の傾向を認めた. 有意の冠動脈病変を有するが運動負荷により虚血を示さない非虚血領域の支配血管, すなわち多枝病変における直接心筋虚血に責任を有さない第2次, 第3次責任血管についてみるとLAD病変, RCA病変, 及びLCX病変が各々12%, 39%, 55%に認められLAD病変に比較し, RCA, LCX病変の頻度が高かった. これらの血管へのバイパスについてみると有効86%, 不変11%, 悪化3%であり, そのバイパス効果を示していた. 以上の成績より以下の結論を得た. 1. 運動負荷時に虚血領域が出現し, その領域へ再分布を認める場合, 非梗塞群は絶対適応, 梗塞群は相対的適応である. 2. 運動負荷により虚血を生じ, その領域への再分布が不良か遅れる場合, 非梗塞群は適応, 梗塞群は相対的適応である. 3. 運動負荷により虚血領域を出現しない場合, すなわち, 多枝病変における第2次, 第3次責任血管へのバイパスはcomplete revascularizationの目的で適応である. |