Abstract : |
雑種成犬77頭を用いて左肺移植を行い, 同種肺移植後の拒絶反応の免疫学的診断をリンパ球機能の面から検討した. 移植犬は自家移植後(4頭), 同種移植後無処置群(32頭), 同種移植後免疫抑制群(41頭)に分け, 術前から術後38日までに経時的に採血して, 微量全血培養法によりリンパ球を培養して, PHA, ConA, PWMなどのレクチンに対する反応及び自然芽球化(SB)を3H-Thymidinのとり込みによって検索した. 同種肺移植の17頭においては術前リンパ球混合培養(MLR)を行った. PHA反応は, 自家肺移植においては術前術後に特別な傾向はみられなかったが, 同種肺移植後無処置群においては術前stimulation indexが10以上の反応性の高いものでは, 術後早期には低下する傾向を示し, 術前SIの低いものでは低値を持続する傾向にあった. 同種肺移植において剖検時の移植肺の組織学的検査で拒絶反応が進行しつつあるものを対象として, 剖検時よりさかのぼって2日以内に採取した末梢リンパ球の機能をみると, 術前値に比較してRHA反応値は明らかに低下し(同種肺移植後無処置群;p<0.05, 同免疫抑制群;p<0.01), SBは上昇するのがみられた(無処置; p<0.05免疫抑制群; p<0.05). 同種肺移植後免疫抑制群では, 術後経時的な胸部X線写真所見で移植側に拒絶反応を示唆する浸潤陰影が出現し, 剖検時の移植肺に拒絶反応の所見がみられたものでは, 胸部X線写真上の変化がみられた時期をさかのぼってSBやPHA反応値に変動がみられたものが多くみられた. 以上のことより, 同種肺移植における拒絶反応の免疫学的診断を行う場合には, SBやPHA反応などのリンパ球機能検査法は有用なパラメーターとなると考えられる. |