Abstract : |
右心室流出路や大動脈狭窄部の拡大, あるいは血管の端側吻合を行うには, 人工心肺や血行の遮断が必要となる. しかし, これらの補助手段自体が大きな侵襲となるので, 補助手段なく拡大や吻合が行える特殊な切開刀(wire guided knife)を考案した. このknifeは湾曲した尖刃の先にguide wireを付け, 柄の先端に内蔵させたものである. 尖刃はguide wireを引くことにより, 支軸を中心に回転して収納部より突出する. 使用方法は, guide wireを拡大予定部の流路内腔に貫通させ, knifeを流路表面に固定する. 次いで, knifeを覆うようにパッチを縫着した後, guide wireを引き尖刃を流路内に刺入するとともにknifeを抜去する. 直ちにパッチ縫着の最後の1針を結紮してパッチ拡大術を完成させる. 雑種成犬を用いた動物実験で, 右心室流出路パッチ拡大術は15頭中12頭に出血量15ml以内で施行でき, 大動脈パッチ拡大術は4頭中2頭が約12mlの出血量で施行できた. パッチ拡大部の2~8カ月後の観察では, 人工心肺下に行った拡大術と同程度の良好な治癒と形態を示していた. 多量の出血を生じた例はknifeの本質的な欠点とは考えられず, 容易に解決できる問題であった. Wire guided knifeの使用は, 人工心肺や血行遮断という侵襲の大きい補助手段を必要とせず, パッチ拡大術が可能であり, 出血が少なく, 手技が簡単であり, 手術のriskを小さくする. パッチ拡大術が右心室流出路のみならず, 大動脈に対しても容易に施行できる点でも進歩である. 今後, 臨床応用も十分可能であると考えている. |