| Authors ： |
安倍十三夫, 杉木健司, 上田睦, 浅井康文, 山口保, 泉山修, 田中利明, 井上紀雄, 松崎智哉, 小松作蔵 |
| Abstract ： |
今回, 著者らは, 教室で昭和35年より昭和57年9月末日までに施行した年長期(18歳以上)ファロー四徴症根治手術58例を取りあげ, これを, 初回根治36例, 二期的根治22例とに分け, 更に, 小児根治例16例を加え, 術前検査成績, 術中の問題点, 手術及び遠隔成績について検討し, 以下の結論を得た. 1) 手術成績では, 初回根治36例中, 手術死6例(死亡率16.7%), 二期的根治22例中手術死3例(死亡率13.6%)であるが, 最近の10年間では28例中2例(7.1%)と向上してきている. 2) 術前の検査成績では, Ht値, 心胸郭比は初回, 二期的及び小児根治例の三者で有意差を示さず, 心電図上の左室発育は年長例では小児例に比し有意に増大し, 心血管造影所見でも, 初回根治例では小児例に比し, 肺動脈の有意な発育を示した(p<0.05). 3) 術中所見で, 年長例では弁性及び漏斗部狭窄合併例を58例中45例(75.6%)に認め, 小児根治例16例中8例(50%)に比し多く, 年長例では右室流出路拡大にパッチ非使用群で, 手術時期との関連を考慮しても高い死亡を認めた. 4) 初回根治例では側副血行路及び右心室心筋脆弱化が認められ, 二期的根治例では, 癒着剥離, 吻合部閉鎖に時間を要し, 小児根治例に比し, 術後出血, 再開胸例を高率に認めた. 5) 遠隔死亡は初回, 二期的根治後, 各2例であり, 術後生存例は初回根治23例(72%), 二期的根治16例(73%)であり両者に差はなく, 術後の心カテーテル所見でも, 初回, 二期的根治例では差はないが, 小児根治例と比較すると不満足例を認め, 特に, 心内遺残短絡を認め, 本症における小児ないし幼少期での根治手術が望まれる. しかし, 年長期においても, 小児期根治に比し, 術後出血, 心筋脆弱化, 癒着剥離, 腎不全の合併は高いが, 手術成績も向上しており, 年長期ファロー四徴症に対し, 積極的に根治手術をすべきと考える. |
