アブストラクト(31巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 単純低温心保存法に関する研究
Subtitle :
Authors : 山田修, 小松作蔵
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学外科学第2講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 8
Page : 1268-1278
Year/Month : 1983 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 近年, 保存心臓を用いた心臓移植がようやく行われるようになったが, 安全な保存時間の限界はいまだ解明されていない, また, 保存心は移植後, 直ちにrecipientの血行を維持しなければならず, 有効なviabilityの判定法の確立が望まれている. このため, 今回, 著者は教室における心筋保護法と心筋保護液(SMC液)を単純低温心保存法, すなわち, cardioplegic arrest+hypothermic storageに応用した. 実験群は保存時間によりA群; 2時間保存群(n=5), B群; 8時間保存群(n=5), C群; 16時間保存群(n=5)の3群に分類し, 心筋エネルギー代謝面, 及び異所性移植後の左室内バルーン法による左心機能の両面からそのviabilityを検討した. 心筋内ATPは保存後, A群では3.31±0.19 μmole/g(mean±SE)と摘出前の93% が温存され, B群でも2.02±0.10μmole/gと摘出前の60%が温存されたが, C群では, 1.16±0.10μmole/gと摘出前の33%にまで減少していた(p<0.001). 移植後のATPはA群2.44±0.15μmole/g, B群1.89±0.08μmole/g, C群1.10±0.11μmole/gであり, 保存後より減少した. 心筋内ADPはA・B両群では保存後, 1.05±0.08μmole/g, 1.14±0.11μmole/gと上昇したが, C群では0.70±0.12μmole/gと低下しており(p<0.025), またEnergy ChargeもC群のみ保存後に0.74±0.04と低下していた(p<0.05), 左室dp/dtはA群3050±72mmHg/sec, B群2200±69mmHg/sec, C群1412±85mmHg/secとC群は有意の低下を示し(p<0.001), diastolic compliance A群0.33±0.053, B群0.29±0.018と両群間で有意差はなく, C群のみ0.20±0.024と有意の低下を示した(p<0.01). 以上の実験成績より, 今回の検討では, 保存8時間後までは十分viabilityがあり, 安全に移植可能と考えられたが, 保存16時間後では, ATP, ADP, Energy Chargeの低下とともに左室dp/dt, 左室complianceの低下がみられ, 移植後の長期生存は困難と思われた. また, 単純低温保存心のprespectiveなviability判定法として, ATPなどの定量的解析は十分有用であると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 単純低温心保存法, 心保存液, 心筋内ATP, Viability, 異所性移植
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