アブストラクト(31巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冷凍凝固の心筋, 冠動脈, 刺激伝導系に及ぼす影響に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 飯田茂穂, 岩喬
Authors(kana) :
Organization : 金沢大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 8
Page : 1279-1292
Year/Month : 1983 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 不整脈に対する外科治療への応用を目的として, 冷凍凝固の心臓各部位に及ぼす影響を実験的に検討した. 雑種成犬48頭を用い, 心外膜冷凍を23頭, 心室中隔冷凍を11頭, 房室ブロック作成(ヒス束冷凍)を14頭に施行し, 電気生理学的, 病理組織学的に研究した. 左心室の5カ所を選び, 冷凍温度- 60℃, 冷凍プローベ5mmのもとで, 心外膜側よりそれぞれ1~5分間冷凍した(5頭). 冷凍後30分以内に屠殺し冷凍病変の深達度を比較すると, 1分冷凍では平均3.4mm, 2分では3.7mm, 3分では4.3mm, 4分では5.1mm, 5分では6.5mmで, 冷凍時間に比例して冷凍病変は深くなった. 冷凍温度, 冷凍プローベに関してもそれぞれに比例して冷凍病変は広く且つ深くなった. 心外膜, 心室中隔に冷凍凝固(冷凍時間2ないし3分, 冷凍温度-60℃)を施行し, 30分~6カ月の期間に屠殺した(29頭). 冷凍部は心外膜, 心室中隔とも常に正常心筋と明瞭に境され, また同様な治癒過程を示した. すなわち, 心筋壊死, 肉芽形成を経て, 1カ月後には線維性瘢痕となり, それ以降では脂肪浸潤が著明となった. 心室瘤の形成や心臓破裂などの合併症はなかった. 冠動脈では直径0.5~1mmの対角枝を冷凍したが, 1カ月後に内膜肥厚がみられ, 冠動脈の内腔は20~50%に狭窄していた. 冷凍10分後及び2週後の冷凍部の心表面電位, 心筋筋層内電位測定では(5頭), 冷凍部とその周辺部とは明確に境されていた. 冷凍凝固による房室ブロック作成では, 全例(14頭)において房室ブロック作成可能でQRS幅の狭い安定した補充調律が得られた. 以上の結果より, 冠動脈直上部を除いては, 冷凍凝固はいずれも合併症は少なく安全であった. また冷凍時間, 温度, プローベを適宜選択することにより冷凍病変を調節することが可能である. 従って, 冷凍凝固は不整脈の外科治療において適切な手段であり, 今後重要な手術手技となり得ると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 冷凍凝固, 心外膜冷凍, 冠動脈冷凍, 心室中隔冷凍, ヒス束冷凍
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