Authors : |
藤原巍, 勝村達喜, 土光荘六, 元広勝美, 稲田洋, 佐藤方紀, 木曽昭光, 野上厚志, 正木久男, 中井正信 |
Abstract : |
甲状腺機能亢進症を合併するリウマチ性心臓弁膜症の2例を対象とし, 甲状腺に対する治療が弁膜症の血行動態に及ぼす影響について報告した. 症例1は心不全を有する大動脈弁狭窄症で, 甲状腺機能が常化するに伴い肺動脈圧は94/40mmHgから34/8mmHg, LVEDPは34mmHgから6mmHgへと下降し, 心不全も消失, 大動脈弁置換術を行い順調に経過した. 症例2はNYHA III期の僧帽弁狭窄症で, 抗甲状腺剤投与に続いて甲状腺亜全摘術を行った. 肺動脈圧, 楔入部圧及び左房径は正常範囲となり, 自覚症状も全く消失したため手術適応から除外した. 甲状腺心は弁膜症と類似した臨床症状を示し, 両者の合併例では甲状腺機能亢進を見逃しやすい. 甲状腺機能亢進は弁膜症の血行動態を悪化させ, 弁膜症の重症度を過大に評価し, 手術適応を誤る可能性がある. 心臓手術後に発生するthyroid crisisは致命的となることが多く, crisisでなくても甲状腺機能亢進に基づく頻脈, 不整脈, 発熱, 酸素消費量と心拍出量の増加やカテコールアミンに対する反応性の亢進は術後管理を著しく困難にする危険性が大きく, 術前の適切な治療が必要である. |