アブストラクト(31巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環下開心術における膵A, B細胞機能 -Arg刺激に対する反応性からみた評価-
Subtitle :
Authors : 濱路政靖, 宮田正彦, 広瀬一, 中尾量保, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 9
Page : 1344-1351
Year/Month : 1983 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環下開心術において顕著にみられる内因性高血糖と著しい糖処理能の低下は, インスリン分泌の抑制のみならず, 種々の抗インスリンホルモンの分泌亢進を主徴とする外科的糖尿病状態に起因すると考えられており, いわゆる手術侵襲に加えて, 低体温, 膵血流の減少などが関与するとされてきた. しかしながら, インスリンとは対蹠的な生理作用をもつ膵グルカゴンの体外循環中の糖代謝における役割は明確でない. 本研究の目的は, 膵A, B細胞に対して膵グルカゴン, インスリン分泌刺機能をもつl-アルギニン(Arg)を用いてそれらの反応性から体外循環における両細胞の機能状態を把握せんとするものである. 軽度低体温下に開心術を施行した14名の僧帽弁膜症症例を対象として, 8名を無処置対照群, 6例をArg負荷群とした. Argに対する膵A, B細胞の反応性は随伴する血糖値に影響されることから高血糖下及び正常血糖下でのArg負荷試験を7名の健康成人に施行し, 非侵襲下での比較対照群とした. Arg負荷中の最大増加量及び反応増加量の総和をもって体外循環中の膵 A, B細胞の反応性を評価した. その結果, 膵A細胞の反応性は正常対照と同程度に保持されていたのに対し, 膵B細胞の反応性は著しく抑制されていた. この膵A, B細胞のArgに対する反応性の著しい解離は, 著者らが開腹手術においても観察しており, 膵B細胞のArgに対する低反応はα交感神経遮断剤投与によっても回復しないという結果から考えると, 副腎交感神経系よりむしろ低体温による影響が大きいと考えられた. 膵A, B細胞の温度感受性の差, すなわち, 低体温による膵B細胞の選択的な機能低下がArgに対する両細胞の反応性の解離に反映されたと考えられ, 膵血流量の低下が随伴していたとしても両細胞の機能的特性は保持しているものと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 体外循環, アルギニン負荷, 膵グルカゴン, インスリン
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