Abstract : |
Bjork-Shiley弁置換後7年から10年を経過した症例の長期予後, 合併症について検討した. 対象は1971年10月から1977年4月までに行われた弁置換32例で, 僧帽弁置換19例, 大動脈弁置換9例, 僧帽弁・大動脈弁置換3例, 僧帽弁・三尖弁置換1例である. 術後生存例の観察期間は平均8.9年(7.1年から10.3年)で合計214.6患者・年である. 手術死亡(術後30日以内)は3例で, 手術死亡率9.4%である. 遠隔期死亡は5例で, 交通事故1例, 血栓弁2例, 脳出血1例, 突然死1例である. 手術死亡を除外した生存率は5年で85%, 11年で82%である. 生存例24例のうち23人(96%)はNYHA機能分類II度以下であった. 人工弁の機械的故障, 心内膜炎, 弁周囲逆流は経験していない. 血栓弁が僧帽弁置換例に2例あり, 発生頻度は0.88%年度である. 1例は抗凝固療法が不十分であったと考えられる. 血栓塞栓症の発生は2.2%年度で, 重症例は0.4%である. すべて一過性で後遺症を残した症例はない. 抗凝固療法による出血の発生は7.9%年度で, 重症例は0.4%年度である. 脳出血により死亡した1例があるが, 他の症例は入院, 輸血を必要としなかった. 以上の成績より, Bjork-Shiley弁は耐久性の優れた, 合併症の少ない人工弁と考える. 予後を左右する血栓弁, 血栓塞栓症, 抗凝固療法による重大な出血は, 適正な抗凝固療法, 緊密な術後管理を行うことで少なくすることができると思われる. |