アブストラクト(31巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後急性腎不全における透析療法の検討 -非乏尿期での透析開始基準-
Subtitle :
Authors : 富樫賢一, 松川哲之助, 江口昭治
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 9
Page : 1397-1406
Year/Month : 1983 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1973年1月から1981年12月までに当科で施行した開心術1,038例中術後急性腎不全を発症した30例 (発症率2.9%)につき検討した. 開心術後急性腎不全は臨床病型により3型に分類された. 30例中, I型(早期乏尿型)は5例, II型(後期乏尿型)は9例, III型(非乏尿型)は16例で, 非乏尿型が約半数を占めていた. I, II型は全例が透析を施行されていたが, III型は25%に施行されていたにすぎなかった. 1例を除き全例が術後1週間以内の発症であった. I型は発症時既に乏尿であり, 発症後平均24時間後には透析が開始されていた. II, III型では発症時は非乏尿であるが, それぞれ平均4.3日, 9.5日後には透析が開始されており, 結局透析を施行されていた18例中14例は, 術後1週間以内に開始されていた. 透析により18例中12例が急性腎不全から回復していたが血液透析を施行した7例が全例回復しているのに比し, 腹膜灌流に終始した11例では5例が回復したにすぎなかった. 急性腎不全よりの回復には平均22.2日間を要していたが, 透析施行群では平均40日と, 非透析群の平均10.9日に比し, 有意に長期間を要していた. 急性腎不全例全体では11例(36.7%)が死亡しており, I型が5例中2例, II型が9例中6例, III型が16例中3例の死亡であった. 術後血清クレアチニン値の最高値が4.9mg/dl以下のものには死亡はなく, それ以上では約半数が死亡していた. 非乏尿期での透析開始には議論のあるところであるが, 今回の検討より, 血清クレアチニン値の上昇速度が1.0mg/dl/日以上で, 心不全, 肝不全, 脳神経障害などを合併している場合には早期透析療法の適応と考えられた. その場合血清クレアチニン値3~4mg/dlで透析を開始し, 腹膜灌流より血液透析に速やかに移行するやり方が最も効果的であると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 早期透析療法, 開心術後急性腎不全, 非乏尿期, 透析開始基準
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