アブストラクト(31巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Veno-Arterial Counterpulsation(VACP)の虚血後の心筋に及ぼす影響 -電顕的及び細胞化学的研究-
Subtitle :
Authors : 阿部邦彦1), 新津勝宏1), 井出千束2)
Authors(kana) :
Organization : 1)岩手医科大学第3外科, 2)岩手医科大学第2解剖
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 9
Page : 1413-1429
Year/Month : 1983 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 最近開発されたPulsatile Assist Device(PAD)は, 重症心疾患に対する開心術に際して有用な装置として注目されている. 本研究では, 実験的に作成した急性不全心に対しPADを用いてVeno-Arterial Counterpulsation(VACP)を行った場合の心筋微細構造を, 電顕的及び細胞化学的に観察し, 部分体外循環(PCPB)の場合と比較しVACPの効果を検討した. 実験には雑種成犬を用いVACP群9頭, PCPB群9頭について観察した. 常温完全体外循環下に上行大動脈を遮断し更に一時的に心室細動を誘発し心拍動をなくし, 45分間心筋を完全虚血状態とした. 続いて遮断解除して心蘇生せしめ, その後はPCPBによるか又はVACPによる補助循環を60分間行い, 次に人工心肺より離脱させ60分間自然放置した. 実験中経時的に3~6回の心筋生検を行い微細構造を観察した. 細胞化学的検索はコハク酸脱水素酵素(SDH), Ca2+-ATPase, 酸性フォスファターゼ活性について実験中の3時点で両群を比較し以下の結論を得た. 1. VACP群では9頭すべてが人工心肺より離脱しそのうち7頭は離脱後も良好な心拍動を保ったのに対しPCPB群では9頭中2頭が離脱不能となり離脱し得た7頭中2頭は離脱後30分ごろより徐脈, 低血圧となった. 2. 心筋微細構造: VACP群では補助循環中及び離脱後60分においてグリコーゲン顆粒の密度が高く保たれていた. また離脱後60分での筋節の長さはVACP群の方が短かった. 3. 細胞化学的変化: 離脱後60分でのSDH活性は, VACP群ではミトコンドリアのクリステ内にコントロールと同様に良く保たれていたが, PCPB群ではコントロールと比べて明らかに低下していた. Ca2+-ATPase, AcPase活性の変化については両群間に差がみられなかった. 以上の結果より, VACPはPCPBと比べて虚血後の心筋に対して冠血流をより増加させることにより, より速やかに好気性代謝及び心収縮能を回復させ得ることが示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : VACP, 心筋微細構造, グリコーゲン顆粒密度, 筋節の長さ, 組胞化学
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