Abstract : |
開心術後に起こる合併症の1つとして呼吸不全があり, post-perfusion lung syndromeと呼ばれる. その原因の1つとして肺表面活性物質の減少が報告されている. 本研究は体外循環前後における肺表面活性物質を肺胞洗浄液より抽出, dynamic alveolar modelを用い肺表面張力を測定, その変化を検討した. 雑種成犬10頭による体外循環前肺表面張力(γ-Min. )は3.5±2.4dynes/cm, 体外循環後γ-Min. は気泡型肺使用群(n=5)では19.6±3.9dynes/cm, 膜型肺使用群(n=5)では4.9±2.7dynes/cmであった. 臨床研究は左右短絡疾患30例にて施行した. 体外循環前γ-Min. は10.3±8.2dynes/cm, 疾患別ではASD4.2±4.5dynes/cm(n=11), VSD13.9±7.7dynes/cm(n=19)であった. 循環動態別では肺血流量増加群(F群)6.5±6.9dynes/cm(n=15), 肺血管抵抗増加群(R群)14.1±7.5dynes/cmであった. 肺動脈圧はγ-Min. とよく相関した. 体外循環は15例に気泡型肺を, 15例に膜型肺を使用した. 体外循環後γ-Min. はASD17.2±9.6dynes/cm, VSDI4.9±8.5dynes/cm, F群19.0±9.3dynes/cm, R群12.5±7.4dynes/cmであった. 人工肺による肺表面活性の変化を体外循環前後のγ-Min. の差でみると, 気泡型肺使用群+11.0±10.0dynes/cm, 膜型肺使用群-0.3±4.4dynes/cmであった. 体外循環前肺表面張力は乳幼児例, 肺高血圧例, 肺血管抵抗増加例にて高値を示した. 体外循環後出表面張力は肺血流量増加例及び気泡型肺使用例にて著明に上昇した, 以上の所見より乳幼児例, 肺血流量増加例, 肺高血圧例における体外循環では膜型人工肺の使用が有利であると考えられる. |