Abstract : |
慢性大動脈弁閉鎖不全症45例について, UCGを中心にその自然歴, 手術成績及び術後経過を追跡した. UCG諸計測値とNYHA心機能分類による臨床像とを対比した結果, NYHA I度群とII度群間には計測値に有意差は存在したが, II度群とIII・IV度群間には有意差を認めず, 明確なる移行域も存在しなかった. 1年ごとの経過観察中うっ血性心不全が発生した12例は全例がLVDd 70mm以上, LVDs 50mm以上, %FS 27%以下であり, mVcfは全例が1.2circ/sec以下, 83%が0.9circ/sec以下であった. AVRを施行した14例を手術成績によりA群(術後経過良好群), B群(術後経過不良群, すなわち大量カテコラミン又はIABP使用群)に分け, 術前のCTR, 心電図所見, カテーテル所見, 人工心肺時間とともにUCG計測値を比較したが, 2群間に有意差を認めたものはLVDs(A群52.9: B群61.5mm, p<0.05), LVDsI(33.0:38.8mm, p<0.05), %FS(29.4:21.8%, p<0.005), mVcf (0.94:0.72circ/sec, p<0.02)の4者のみであった. 術後経過において術後早期(1/2カ月)に最も良く改善したものはmid-systolic wall stressで(%decrease 26.2%)術後1年ではLV Mass (47.5%)であった. LVDdの減少率は1/2カ月19.3%, 1年34.0%と良好であったが, LVDsの減少率はLVDdに比して軽度であった. %FS及びmVcfはA群では術後早期の低下は軽度で, しかも術後1年で術前値前後に回復したが, B群では回復の程度はA群に比して不良であった. 以上の検討より, (1) NYHA機能分類ないし心不全症状などの臨床像とUCGから推定された左室機能の関連性は明確ではなく, 手術時期の決定に臨床像の果たす役割は少ないと考えられた. (2) 左心不全の発生及び手術成績を考慮して, UCG検査の結果LVDs 50mm, %FS 27%, mVcf 0.9circ/secとなれば無症状でも外科治療を考慮すべきであると考えられた. (3) 術後左室拡大は早期より軽快するが, 収縮機能の改善は顕著ではなく, 特に術前に収縮不全が存在した症例の改善率は低かった. |