アブストラクト(31巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心筋保護における再灌流液Ca++濃度の影響について
Subtitle :
Authors : 入沢敬夫1), 青山克彦1), 星永進1), 西村和典1), 今井高二1), 鷲尾正彦1), 若林明夫2), Kennth Rietfors3)
Authors(kana) :
Organization : 1)山形大学医学部第2外科, 2)California大学(Irvine)医学部外科, 3)California大学(Irvine)
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 10
Page : 1498-1504
Year/Month : 1983 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術において心筋虚血により細胞形質膜が障害されると, Ca++が細胞内に制限なく流入し, その結果, 高度の場合にはstone heartとなることが指摘されている. この事実は虚血後の再灌流時における心筋細胞内へのCa++流入を抑制することの重要性を明示するものと考えられる. この観点から, 著者らは再灌流液中のCa++濃度と心筋障害の発生との関連について実験的研究を行った. 実験は家兎 (32頭)の摘出心臓を酸素化希釈血液で灌流する装置を用い, 30分間の常温下虚血後に各種Ca++濃度 (0.13±0.01, 0.85±0.14, 3.6±0.23, 10.7±0.6mEq/L)で再灌流を行い, 心筋障害の発生について検討した. 過度低Ca++濃度(0.13mEq/L)での再灌流の場合では心収縮はこの濃度では全く発生せず, Ca++5mEq/Lの添加によっても心収縮の回復は不良であった. 左室心筋の出血は中等度ないし高度であり, 心重量の増加も著明であった. 低Ca++濃度(0.85mEq/L)での再灌流の場合ではCa++添加により, 心収縮は良好に回復し, 左室心筋の出血は軽度であった. 正常Ca++濃度(3.6mEq/L)での再灌流の場合では心収縮は良好に保たれ, 左室心筋の出血も軽度であった. 高Ca++濃度(10.7mEq/L)での再灌流の場合では心収縮は軽度に低下した. 左室心筋の出血は大部分が軽度であったが, CPKは 明らかに増加した. 以上の成績から, 過度の低Ca++濃度での再灌流は著明な心筋障害をもたらし, また高Ca++濃度での再灌流も明らかな心筋障害をもたらすことが明示された. 再灌流液のCa++濃度は0.85~3.6mEq/Lと低い方が望ましく, その際の低下した心収縮はCa++添加により良好に回復することを認めた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋虚血, 再灌流液, Ca++濃度, 心収縮, 心筋障害
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