Abstract : |
雑種成犬10頭を使用して, 超低体温低流量完全体外循環法(hypothermic low flow perfusion法)を施行し, 質量分析計による脳組織ガス分圧測定を行った. 体外循環の灌流法は著者らの臨床における方法にならい, 灌流量は直腸温30℃以下で60ml/kg/min, 25℃以下で40ml/kg/min, 20℃以下で25ml/kg/minとし, 40ml/kg/min以下の低流量灌流を45分間持続した(LFP群). 対照群として, 中等度低体温高流量灌流を10頭に施行して, 同様に脳組織ガス分圧の測定を行った. 脳組織酸素分圧は, 対照群, LFP群とも体外循環前後を通じて有意の変動を示さなかった. 一方, 脳組織炭酸ガス分圧は, 対照群では有意の変動はなかったが, LFP群では低流量灌流開始後30分ごろから比較的急な上昇を示し, 低流量灌流終了時には有意の上昇(p<0.003)となり, 加温灌流開始後に最高値を示した. しかし, これは加温灌流中に徐々に下降し, 大動脈遮断解除後には前値に近づき有意の差はなかった, 以上より, 超低体温低流量灌流45分間では, 脳組織酸素分圧は良好に保たれ, 脳組織炭酸ガス分圧の上昇も可逆的であるが, 低流量灌流30分ごろからの脳組織炭酸ガス分圧の比較的急な上昇は, 低流量灌流に時間的な限界があることを示唆すると考えられる. |